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◆社長訪問◆17時に退社しても、売上は伸びています

今回は、『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』著者で、化粧品会社ランクアップの社長である、岩崎裕美子さんにお話を聞きました。ランクアップを立ち上げる前は、広告会社の取締役として連日終電まで働いていた岩崎さん。そのような働き方をしていた彼女が、どのようにして長時間労働をしない会社をつくったのでしょうか。

 

長時間労働は、会社の成長につながらなかった

「ほとんどの社員が17時に帰る会社」をつくったきっかけを教えてください。

私は、 17時に帰るかどうかよりも、長時間労働をしない社会にしたいと思っています。前職の広告会社にいた時は、毎日終電で帰るという働き方をしていました。テレアポをして、新規でお客さまを獲得して、そこから適切な媒体を探して提案して、また新しいお客さまを探して…という、どんどん忙しくなるビジネスモデルだったんです。長時間コツコツとテレアポしている人が勝つ、逆に、長時間働かないとノルマを達成し続けられない状況でした。当時、私は取締役営業本部長で、社員を遅くまで働かせていた張本人でした。

当然、社員は機械ではないので、このような働き方をしていたら、2年ぐらいで限界が来て辞めてしまいますよね。3年以上続く人がいませんでした。しかも、女性社員が多かったので、結婚・出産を見越して20代後半になると辞めていってしまう人が多かったのです。管理職も全員抜けてしまったので、取締役である私が新人の教育もしていました。こうなってしまうと、組織が維持できなくなってしまいます。いくら短期的に売上が上がっていても、人の入れ替わりの激しい会社は継続的に成長することはできません。働く社員にとっても、会社にとっても、働く環境ってすごく大事だなとこの頃に痛感しました。

 

17時退社のきっかけは、サマータイム制度

それから自分で会社を設立されたのですね。最初から17時に退社されていたのですか?

実は、ランクアップを設立した当時の勤務時間は9時から18時までで、プラスで1時間くらい残業するというスタイルでした。状況が変わったのが、2011年の震災のときです。原発停止の影響で、節電対策が進んだ時期があったのを覚えてますでしょうか。そのタイミングで、30分始業時間を早める、サマータイム制度を導入したのです。勤務時間は8時半から17時半とした上で、「17時に帰ってもいいよ」という特別措置を3カ月間おこないました。家族のいる社員が多かったので、早く帰らせてあげたかったんですよね。その大義名分もあったので、みんなも17時に帰りやすかったのだと思います。そして、3カ月が経って、元に戻そうという時に、社員が「17時がいいです」「私たち、17時までで大丈夫です、仕事できます」と言ってきまして(笑)、今に至ります。

 

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「17時に帰ってもいいよ制度」を本格的に導入されてみて、いかがでしたか?

制度を取り入れて、会社の売上が伸びました。ただ、それだけではなく、17時に仕事を終わらせると、1日がすごく充実するんです。家族との時間を過ごすも良し、セミナーで勉強をするも良し、社員同士で部活動をするも良しと、みんなが平日からプライベートを充実させているように思います。

もちろん、仕事なので締切があって18時まで仕事をする日もありますが、私が目指しているのは無駄な長時間労働の撲滅なので、それはそれで良いかなと。ちなみに、新入社員は残業OKにしています。先輩社員が15分ほどで作成するエクセルシートに、入社したころは1時間かかったりしますよね。先輩社員は、早く帰ってしまうので、聞きたいことはすぐ聞きに行ったり、優先順位をつけたりと工夫をしながら仕事をするようになったみたいです。ダラダラ仕事をするのではなく、限られた時間で成果を上げるための基礎を今つくっている感じですね。

 

評価制度はどのような仕組みになっているのですか?

まだ試行錯誤中ですが、今は等級制度をつかってます。6つに分かれていて、上司の指導のもと仕事を進めることができる人はS1、自立している人はS2、模範的な人はS3みたいな感じです。全社員に同じ基準が適応されるので、時短勤務の社員もきちんと成果を出せば、平等に評価されます。16時に帰るママ社員と、17時に帰るフルタイムの社員、どちらも求める成果は一緒です。

 

「残業なし」=「社員に愛される会社」ではなかった

残業がほとんどないにも関わらず、会社の雰囲気が悪かった時期があったと、本で拝見しました。

そうなんです。昔は私がワンマン社長で、軍隊みたいな会社だったんですよ(笑)。社員の意見に対して、「どうしてそういうふうに考えるの?」って、めちゃくちゃ詰めたり。全部の事柄に口を挟んでいました。自分だけが偉いと勘違いして、「私の言うとおりにやれば、売り上げが上がるのよ」って思ってたんです。残業がない会社だったにも関わらず、会社の雰囲気は暗くて、体調を崩す社員まで出たのですが、私には何が悪いのか分かっていませんでした。

そんな状況の中、全社で受けた研修が転機になりました。その研修で「あなたたちは会社に対して何ができますか」という問いがあったんですけど、それに対して「私たちは会社に全く認められていない」「会社に対して何が出来るかなんて考えられない」って泣き出す社員が複数人出たのです。その時はじめて、社員が「やりがい」を求めていることに気付きました。労働時間ばかりに頭がいってしまって、彼女らが活躍できる場所をつくることができていなかったんです。

その後、「挑戦」というスローガンをつくって、社員に任せるように変えました。最初は、「あんなに怖かった社長が、権限委譲ってほんとかな」って社員も感じたと思うんですけど、実際に口を出さなくなったので、少しずつ挑戦する人たちが増えていきました。方針だけを伝えて、ほかは社員に委ねるようになって、売り上げがまたさらに伸びました。いろんな社員の個性を生かした方が、アイデアが活発に出て、会社の幅が広がるのかなと思います。

 

まずは、挑戦!やめるという選択肢もあります

御社には素敵な福利厚生・制度が沢山あるそうですが、経営の負担にはならないのでしょうか。

負担になったら、社員に説明した上でやめればいいんですよ。実は、こういう補助制度って、社内でも流行りがあるんですよね。たとえば、社員の提案で生まれたスポーツクラブ助成金制度という制度があります。はじめたころは毎月2万円まで支給するものでしたが、最近は利用者があまりいないので、月1万円に減額することにしました。逆に、美術館・博物館代を毎月2000円まで支給する制度があるのですが、こちらはプラネタリュウムも加えてほしいという意見が複数人から出たので、採用することにしました。すべての制度の利用率を経理が見える化してくれているので、「使っている人がいないからやめます」と言えば納得してくれます。意外に会社が破産するほど、使われることはありませんし、会社が赤字のときにスポーツクラブに行くお金を出してほしいという社員はいないと思うんです。いつか来るかもしれない赤字を理由にやらないというのは、おかしな話だと思うので、できそうな事は、とりあえずやってみるように心がけています。最近は部活動が流行っているんですよ。コアダンス、バンド、手芸、料理、塗り絵とか、5人以上集まったら、1人月2000円支給する仕組みです。部活動は、他の部署の人とも仲良くなれるし、新入社員とも話すきっかけになるので、どんどん活性化してほしいですね。

 

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最後に一言、メッセージをお願いします。

業界によっては長時間労働を余儀なくされる仕事があることも理解はしています。でも、みんな余裕のある働き方を求めていると思います。経営者の方は、「残業がなくなったら売上が落ちるじゃないか」とお考えかもしれません。そんな時は、社員に相談してみてください。夜遅くまで働きたいという人はいないと思うので、残業しなくても成果を出せるアイデアが出てくるはずです。まずやってみて、失敗したらやめればいいんです。私は、これからも長時間労働をしないために、社員と挑戦を続けて行こうと思います。

 

>前回のインタビューは 「◆企業訪問◆多様な働き方について考える:電通アイソバー」 はこちら
>ほかの SPECIAL INTERVIEW -インタビュー- はこちら
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[PROFILE] 岩崎 裕美子

1968年2月8日北海道生まれ。1988年に藤女子短期大学卒業後、JTBに入社。その後、15年間広告代理店に勤務し、新規開拓営業として多くの通信販売の化粧品会社を担当。1999年から取締役営業本部長として活躍。しかし、長時間労働のワークスタイルで止まらない社員の離職に悩む。その経験から長時間労働のない経営を目指し、株式会社ランクアップ設立。オリジナルブランド「マナラ化粧品」は、ヒット製品である「ホットクレンジングゲル」をはじめ、多くの女性から支持され、現在、90億円を売り上げる。2013年には通信販売業界では初の東京ワークライフバランス認定企業の育児・介護休業制度充実部門に選ばれる。                                                           

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