しゅふクリ・ママクリ

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仕事も家庭も充実して、それが一つで私―電通テック「しゅふクリ・ママクリ」広告制作チーム

2015年9月にサービスを開始した「しゅふクリ・ママクリ」は、2016年9月に、日本雑誌広告協会主催の第59回「日本雑誌広告賞」において、第1部F部門で銀賞を受賞。2016年12月には、日本アドバタイザーズ協会主催の第55回「JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」において、雑誌部門のメダリストに入賞しました。その広告を制作した電通テックのクリエイティブチームにインタビューしました。

はじめに自己紹介をお願いします。

菊池: クリエイティブディレクターとして、「しゅふクリ・ママクリ」の企画に参加しました。コピーも書いています。

笠原: 子育てをしながら仕事をしています。化粧品やファッションなど、自分の生活に近い領域に関わっています。今回も私にぴったりの仕事があるよと、上長から打診されて、アートディレクターとして関わりました。

森: 普段はアートディレクターとして自動車や銀行の仕事をしています。この仕事には、お弁当要員として途中から入りました。

新實: 僕も途中からトイレットペーパー職人として参加しました(笑)。文字のレイアウトも担当しています。


「しゅふクリ・ママクリ」のロゴは、複数ご提案いただいた記憶があります。

笠原: 一緒に子育てしている夫婦ペンギンをキャラクターにした案や、2つの花を咲かせようというコンセプトで花をモチーフにした案、家庭も仕事もバランスをというコンセプトでヤジロベエをキャラクターにした案など、いろいろな案をご提案させていただきました。

菊池: 僕が考えたコンセプトが「家庭もクリエイティブもどっちも諦めなくていい」というものだったので、どれも「2つのことを楽しくやっている」とか「バランス取って生きていこう」というようなデザインになっています。今改めて振り返ってみるといろいろな方向性があったんですね。そのなかで、採用されたロゴは、一番わかりやすく、汎用性が高いと思いました。


左から:森さん、菊池さん、笠原さん、新實さん



ロゴから「しゅふクリ・ママクリ」というフレーズがなくなったとしても伝わるデザインだと思いました。

笠原: 実は、このロゴは一本の線でできている一筆書きなんですよ。動画で線を動かせたらいいなと考えて。実際にWeb動画をつくったときに、すこし動かしてみました(笑)。

菊池: 「仕事も家庭も充実して、それが一つで私」というテーマで描いています。現在、ポスターや動画、Webサイトなどいろいろな媒体でロゴを使っていますが、どの表現にも調和するロゴができたと思います。


はじめは、ポスターではなく、ロゴやコンセプトリーフレットの依頼だったんですよね。

菊池: はい。もともとは、「しゅふクリ・ママクリ」を新しく立ち上げるということで、ロゴやコンセプトリーフレットの依頼でした。それらをつくった後に、面白そうなアイデアが思い浮かんで、上長に相談したところ、自主提案しようという話になりました。

笠原: 会社のエントランスに貼るインナー向けポスターの提案だったんですよね。

菊池: それが、最終的には、3種類のポスターとそのポスターと連動したWeb動画2本までに発展しました。こんなに、雑誌で何回も広告が掲出されて、広告賞までいただけるなんて思いもしませんでした。


ポスターのアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

菊池: あるとき、トイレットペーパー職人の話を聞いて、動画のイメージが浮かんだんです。トイレに入ると、奥さんがつくったトイレットペーパー細工を発見して旦那さんが困ってしまうというような。それで次の日、洗濯した靴下を丸めている妻を見ていて、これを芸術的に畳まれたら笑ってしまうなと、ふと思ったんですよね(笑)。

笠原: ものすごく凝ったキャラ弁に困る中学生とか。お母さんは働きたいんだなと、だんだん家族が気づいていくというストーリー。いろんなバリエーションができそうだし、提案したら面白いんじゃないかと思いました。


いろいろバリエーションがあるなかで、「お弁当」「りんご」「トイレットペーパー」を採用したのはなぜですか?

菊池: 第二弾、第三弾もあるかもしれないと考えて、最初は実現しすいものをやろうと思っていた矢先、社内にお弁当をつくってきている奴がいたんです(笑)。

森: はい。僕は自分のお弁当を自分でつくっているんですが、あるとき上長から「お前、弁当つくってたよな?」と言われまして、何の話かと思ったら仕事の話でした。最初は、どういうふうにつくればいいのか、全くイメージが湧かなくて、とりあえずデパートでふりかけを買い漁って、家でつくってみました。

菊池: 森は「ここまでやるか!」と突っ込んでしまうものをつくってきました(笑)。ふりかけでグラデーションを表現していたりして。

森: なんでも仕事につながるものだなあと思いました。とにかくキャラ弁は奥が深いです。具材の位置が少しでもズレると、見え方がまったく違ってくるんです。目の部分のゴマは、ピンセットで乗せました。何回も練習してようやく見せられるものができましたが、最初は福笑いみたいになっていて、全然できなくて、正直「やばい!」と思いました。

笠原: 森に声を掛ける前に、私も試しにつくってみると2時間半くらいかかりました。1日で3種類のポスターと動画を同時に撮影するスケジュールだったので、1人でやるのは無理だと思い上長に相談したところ、森がやってきました(笑)。

森: お弁当は、時間が経ってしまうと、水分を吸ってベッタリしてしまうので、撮影当日の早朝から2セットつくって持っていって、現場で微調整しました。後は撮影が進むのを見ているだけなので気楽でした(笑)。


お弁当にモナリザを描いている森さん



りんごの作品も、絵が細かくて大変そうですね。

笠原: 絵を下書きして家で試しに削ってみると、案外できるなと思ったので、本番ではもう少し複雑なデザインにしてみました。

森: 撮影当日は、笠原と僕の2人でつくって、競合方式で、綺麗な方を使おうということになりました。僕はお弁当の時点で力を使い果たしていて、手元がおぼつきませんでしたが。

菊池: 練習のりんごのほうが彫りやすかったですよね。

笠原: 練習用のりんごは100円くらいの、一年前に穫れたりんごで皮と身が分離していて、ナイフで切ると皮だけむけて綺麗に絵ができたんです。本番は鮮やかな赤色を出したかったので、高級なりんごを用意しました。さて、いざ下書きをしようと思ったら全く写らないんですよ! 美味しいりんごは、蜜がいっぱい出るんです。無理に書こうとすると染みができたので、結局、下書きすることをやめてフリーハンドで削りました。

森: 変色を防ぐために、塩水を掛けながらの作業でした。


トイレットペーパーを仕上げている新實さんとりんごを彫っている笠原さん



トイレットペーパーはいかがでしたか?

新實: 僕は、笠原さんと森さんと違って当日に準備しなくてよかったので、結構時間があったのですが、どうやって折るのか調べるのが大変でした。ペガサスとシロクマを折ることは決まっていたんですけど、折り方が複雑で難易度が高くて、ネットで折り方の動画を見たり、専門書を漁ったりしてました。僕は紙飛行機しかつくったことがなかったので、最初は1つ折るのに2時間もかかりました。最終的に、シロクマに決まったのは、ペガサスが大きくなりすぎて、何だかわからなくなってしまって……。シロクマのほうが自然で可愛いし、わかりやすいということで採用になりました。


トイレットペーパーで折ったんですか?

新實: それだと小さくなりすぎるので、書道の半紙で一番大きいサイズのもので折りました。

森: 種明かししていいの? 全部トイレットペーパーで折りましたって言えばいいのに……。


広告賞では、どの点を評価されたとお考えですか?

菊池: 先日、第59回「日本雑誌広告賞」授賞式に行ったのですが、大きな予算規模を持つ名だたるブランドが並んでいるなかで「しゅふクリ・ママクリ」は異質な存在でした。つくっている側からすると手弁当で、他の企業とは予算が全然違う。企画力の抜けの良さが評価されて嬉しかったです。

笠原: むしろいいですよね。

菊池: アイデアでちゃんと同じ土俵で戦えて、賞までもらえてうれしいなと、むしろ思いました。


「しゅふくり・ママクリ」の雑誌広告



笠原さんは、お子さんがいらっしゃると伺いましたが、実際に、このようなシチュエーションはあるんですか?

笠原: ありますよ。例えば、ハロウィーンパーティでは、恒例でポスターをつくっているんですけれど、毎回オリジナルのものを本気でつくるんです(笑)。子どもの仮装も本気ですし、運動会のTシャツも本気でつくっています。

菊池: 今回の「しゅふクリ・ママクリ」の企画は、「クリエイティブの仕事をしている人は、家庭でどんなふうにクリエイティブを活かしているのかなと、想像するのが面白い」というのが真ん中にあって、笠原さんは、そのまま素で活かしていますよね。

笠原: スパゲティも無造作にぽんと出すと子どもは食べてくれなくて、スパゲティをクルッと巻いて、まわりにソースを盛り付けるとよく食べてくれるんですよ。


笠原さんは10年間、子育てと仕事を両立されていらっしゃいますが、産休前から復帰を考えていたのでしょうか?

笠原: そうですね。ずっと家にいるのが耐えられなくて、出産後4カ月で復帰しました。早く社会との関わりを持ちたかったんです。

新實: 笠原さんはフル稼働ですよね。

笠原: みなさんが助けてくれるからこそできていると思います。私は、基本的に9時から18時の勤務ですが、クライアントさんも協力会社さんも、私が早く帰ることを知っていていますので、18時までには大方、問題を解決して帰ることができるんです。そんなにうまくいかない日も、もちろんありますが……。

菊池: 常に家庭への意識を持ちながら仕事をしていてすごいと思います。

笠原: 子どもの元気さにエネルギーを吸い取られてしまうこともありますが、やはり子どもがいるからこそ頑張れているのかなと思います。


>前回のインタビューは 「IT企業は多様な働き方に寛容的!? パパの家事・育児-はてな」はこちら
>ほかの SPECIAL INTERVIEW -インタビュー- はこちら
>しゅふクリ・ママクリとは?

[PROFILE]菊池 雄也(きくち・ゆうや)

株式会社電通テック
ブランドエンゲージメントセンター
クリエーティブディレクター/コピーライター

1978年生まれ。東京都八丈島出身。 2002年に電通テック入社し、営業職を経て、コピーライターに。現在は駆け出しのクリエーティブディレクターとして活動中。一児の父。

[PROFILE]笠原 美和(かさはら・みわ)

株式会社電通テック

1975年生まれ。長野県出身。1999年にアートディレクターとして電通テックに入社。2005年に出産し、小学6年生になる一児の母。

[PROFILE]森 大地(もり・だいち)

株式会社電通テック

1986年生まれ。石川県出身。 2008年にアートディレクターとして電通テック入社。フード、イラスト、アニメーション制作、脚本など、人手が足りない部分はなんでもこなす。

[PROFILE]新實 将人(にいみ・まさと)

株式会社電通テック

1988年生まれ。東京都出身。2012年アートディレクター職として電通テック入社。趣味はミュージカル鑑賞、クラフトビール巡り。空手歴13年の黒帯。


※2017年2月に取材した内容を掲載しています。