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「働き続けるためにはどうすればいいのだろう」という発想からはじまる支援—バーソン・マーステラ

グローバルPRエージェンシーの「バーソン・マーステラ」は、子育てをしながら働く女性がたくさん活躍している会社です。会社として、働く女性をどのように支援しているのか、人事担当の斉藤さんにお話を伺いました。

改めて、「バーソン・マーステラ」について教えてください。

バーソン・マーステラは、1953年にハロルド・バーソンが創業したPR会社です。WPPグループに所属し、ニューヨークに本社を置きます。日本法人は、日本の広報がまだ黎明期だった1973年に設立しました。長い歴史の中でいろいろな積み上げができている会社です。現在の社長も若くしてバーソン・マーステラに入社しましたが、その時に学んだスキルにプラスアルファを加えて現在の社員に伝承しています。上司からしっかりと教えてもらい、PR畑をつくってきた人たちの技というか考え方を学べます。アメリカでも、創業者の会長がまだ現役で働いています。96歳なのですが、毎日出社していて、私たちも「ハロルド」と気軽に呼べ、何かあれば、直接メールができるすごく近い存在です。それはとても大きなことです。

また、当社はニューヨークや香港など主要都市にオフィスがありますが、「シームレスネットワーク」といって、つなぎ目のないひとつの会社という意識を持っています。どのオフィスに所属していたとしても、社員の間に同じ気質を感じることができ、そんな私たち自身を「バーソン・パーソン」と呼んでいます。例えば、面識のない上海オフィスのスタッフが、「休暇で日本に行くので、オフィスに立ち寄ってもいいですか?」と、気軽に言えるカルチャーです。さらに、一度、バーソン・マーステラで働いた人は、たとえ会社を離れたとしても、いつまでもバーソン・マーステラネットワークの一員という意識が強いです。


グローバルでノウハウも共有化されているんですか?

私が入社した2003年には、かなりしっかりとしたイントラネットが既にできあがっていました。以前、外資系の広告会社に勤務していたのですが、バーソン・マーステラに入ってすごいなと思ったのが、グローバルで情報共有ができていることです。今も実際に、日本のチームもメンバーに含まれる大きな案件が動いていて、毎日グローバルチームと電話会議を行ったり、週3回のペースでテレビ会議をしたりしています。オフィスは世界中にありますが、場所的な遠さは全く感じられません。同じ会社で働いて、ひとつの目的に向かって走っているということを共有しています。




社員構成はどのようになっていますか?

日本法人ですと、社員は40名おります。現在は9割が女性です。20代の新卒社員からベテラン社員までバランスよく所属しています。中途と新卒の割合は、中途社員の割合が多いですが、だんだんと同じ割合になってきています。


社員の9割が女性ということでしたが、現在、子育てや介護をしながら働いている方はいらっしゃいますか?

現在、4名の社員が未就学児童の子育てをしながら働いています。また、介護休暇を取っている社員はいませんが、ご両親の体調の関係で、多く休みを取っているスタッフが1名おります。


何か支援制度などあるのでしょうか?

2016年7月1日付けで「働く親と赤ちゃん応援制度」という支援制度を導入しました。


どのような制度なのでしょうか?

男女問わず、未就学児童を持つ社員全員に対して、月額固定で補助金を支給しています。使いみちはあえて制限しておりません。


導入しようとしたきっかけはなんでしょうか?

2015年に出産した社員が、2016年春に復帰する予定でしたが、どこの保育園にも入れなくて、4月に戻ることができませんでした。8月になると育休の期限が切れてしまうため、やむなくインターナショナルスクールに通わせることになりました。普通の保育園よりもお金がかかってしまうなかで、彼女は職場復帰をしました。それが、支援制度をつくるきっかけとなりました。

働きながら子育てしている社員を支援できないかという話は前からありました。「幼稚園をつくることは、今の規模ではできないよね」とか、そういうことを考えていたときに、お母さんたちのニーズを聞いてみたら、ニーズがばらばらで。それであれば、金銭的に補助をするのが一番いいという結論にたどり着きました。


在宅勤務の方もいらっしゃると伺いました。

札幌で仕事をしている社員が1名おります。もともと東京で勤務していたのですが、結婚を機に札幌に引っ越して、それからは在宅勤務をしています。実は女性社員2名の結婚が決まりまして、それぞれ三重と福岡に住むことが決まっています。とくに辞めるわけではなく、遠隔から仕事をすることになっています。


何か制度があるのでしょうか?

日本の企業は「制度」「制度」となってしまいがちですが、「優秀な社員なので、結婚で地方に行くからといって辞める必要はないのではないか」という逆の発想です。会社としても働き続けてほしい、彼女たちも働き続けたいという意思があるので、「働き続けるためにはどうすればいいのだろう」という考えから入っているので、特に、制度というかたちには当てはめておりません。




札幌で働いている方はいつからそのような勤務体系になったのでしょうか?

2010年1月1日からです。札幌から働いているスタッフは、シニアストラテジストといって、特に調査・分析をする業務を主にしています。今、うまくいっているのはそういう職種のせいなのかもしれません。彼女は朝はやくからリサーチをはじめ、レポートなどを作成しているのですが、たぶん誰よりも働いているという印象を社員みんなが共通認識としてもっています。仕事をしているのが、遠隔地ではあるのですが、レポートのクオリティなどから、ものすごく働いているのが見えます。

今度は、実際にクライアントと会って仕事をしているふたりが地方に行くので、また違ってくると思います。ただ、営業といいますかコンサルタントと当社では呼んでいますが、基本的にオフィスで働いている時間が長い職種です。1日の殆どを外に出て動き回っている感じではありません。例えば、提案書を作成したり、アイデアを考えてまとめたりすることは自宅にいてもオフィスにいてもあまりかわりなくできると思いますし、それで評価が下がることはありません。

ふたりとも、ちょうど中間層、アソシエイトというレベルなのですが、お客さまとも良い関係をつくっていますし、PRパーソンとしていまノリに乗ってきているところだと思います。結婚して地方にいかなければならないとなったとき、たぶん、本人たちも勤務を続けたいと考えたと思うのです。働く親をサポートしようという姿勢が会社にあると気づいてもらっていると思いますし、札幌の先輩社員の実例があるので、なんらかのかたちで会社と関わっていけるのかなと感じていたと思います。


ご本人から、そのような要望があったのでしょうか?

はい。社長に結婚の報告があったときに、「じゃあ、どのように働こうか」というような自然な流れで決まりました。


素晴らしいですね。普通にできることが一番すごいと思います。

10年くらい前に、結婚でハワイに移住することになったスタッフがいて、彼女は退職しました。当時はまだ、リモートで働くというアイデアが私たちにもなかったのですが、彼女がハワイに行ったときに、「なんかもったいないよね」という感じがありました。彼女も同じように、会社との関係を続けるために、何かできないかと考えていてくれたので、今までの経験、そしてハワイと東京の時差を活かして翻訳を依頼するというアイデアが出てきたのです。一昨年、そのスタッフが東京に戻ってきたのですが、自然な流れとしてまた当社で働いています。当社は、その場その場でいろいろな対応ができているので、「結婚しても続けられる」「出産しても続けられる」「親の介護をすることになっても続けられる」という意識がみんなの中にあるのだと思います。2011年以降ですと、出産した女性は100%復帰しています。


さまざまな働き方ができているのはPRという仕事柄もあるのでしょうか?

PRなのでやりやすいという考えはあると思いますが、個人的にはどの業種でも意外とできるのではないかと思っています。

社長がよく言っているのが、「できないと思ったら、できない。だから、実現させるためにはどうすればいいかというところから考え始めよう」です。そのような考え方でいくと、何かすごく新しいアイデアが生まれるかもしれないと思っています。例えば、テレビ会議とか、私が新卒のときにはありえなかったことが、今の時代では普通に行われています。5年、10年で、ものすごくいろいろなものが変わってきていて、今はできないかもしれないけれど、数年後にはできるかもしれないと考える。否定から入るのではなく、ポジティブなところから入ることが重要かなと思います。


やはり、社長の福永さんが女性だからということもあるのでしょうか?

福永は、「『女性』『女性』というと、なにか偏っていると思う」と日頃から言っていて、「女性だけでなく、男性も頑張らないといけない」「平等に働ける職場が普通でなければいけない」と、すごくニュートラルな考えの持ち主です。そういう意味では、福永の良い影響があると思います。トップがそのような考え方なので、みんなそれが普通なんだという考え方になっていく。洗脳されているかもしれないですね(笑)。

また、彼女が一番初めにバーソン・マーステラに入社したとき、彼女のボスは女性でした。バーソン・マーステラは、1973年の設立から「女性も活躍できるのが普通」というカルチャーがあります。女性も男性も実力があれば、平等に活躍できると思っています。


出産しても働けるとイメージができて前向きになれますね。

2011年に双子の男の子を出産した女性がいます。彼女の前は、結婚している女性があまりいませんでした。彼女のなかでは、出産しても続けられるかなと悩んでいたときに、双子と判明して。「何とかなるわよ」「大丈夫よ」という周りの雰囲気と、とりあえず、「やれるだけやってみなさいよ」という応援もあり、通常勤務で復帰しました。そして今、その子どもたちは6歳になろうとしています。

事例ができると、「私も子育てしながら働けそう」と思ってくるのだと思います。みんなが寛容になって、次は私かもしれないという当事者意識をもつことが重要だと思います。


>前回のインタビューは 「仕事も家庭も充実して、それが一つで私」 はこちら
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[PROFILE]斉藤 真子(さいとう・まさこ)

株式会社バーソン・マーステラ
エグゼクティブ セクレタリー 兼 人事担当

2003年にエグゼクティブ セクレタリーとしてバーソン・マーステラに入社。2006年から人事を兼務し、新卒および中途採用を担当する。


※2017年4月に取材した内容を掲載しています。