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テー・オー・ダブリューの多様な価値観と課題に応える働き方【変わる企業 変わる働き方】

家庭と仕事の両立には不安がつきまとうものですが、今、多くの企業で育児や介護と仕事の両立を支えるための人事制度が用意されているのをご存じでしょうか。働く人一人ひとりのニーズをくみ取り、多様な働き方が選べるようになっていると聞くけれど、広告・マーケティング業界では…? 第4回は、テー・オー・ダブリューです。対話から生まれる支援や働き方を選べる人事制度について、取材しました。


テー・オー・ダブリューの取り組み

テー・オー・ダブリューは、リアルイベントやオンラインイベント、WebやSNSを活用したデジタルプロモーションなど、体験価値の提供を核に、高い専門性を活かしたプランニングやプロデュースを行う会社です。

2022年2月にはパーパス「新しい時代の体験を創る」を策定。従業員数は184名(2023年6月末現在)で、およそ7割がプロデューサー職です。女性リーダー育成やメンター制度、1on1を活用した女性活躍推進にも取り組み、社員一人ひとりの活躍を支える環境と仕組みづくりを進めようとしています。

特に定評のあるイベント企画や運営の現場ともなると、なかなか家庭と仕事の両立は難しいのでは…。そう思ってしまうところですが、同社の取締役兼執行役員の雨宮さんの言葉は、少し意外なものでした。

「当社には、産休・育休制度も時短制度ももちろんありますが、忙しい仕事であっても社員が安心して働けるように設けた制度として、昔から、育児手当を充実させてきました。第一子に月3万円、第二子以降は一人あたり月1万5000円を追加支給しています」(雨宮さん)

つまり第一子に年間36万円、第二子以降は一人あたり年間18万円の育児手当が支給されるということ。これは手厚い…。

「加えて、学資保険。0歳から15歳(中学校を卒業する3月)まで、月々の保険料を会社が支払い、積み立てます。15歳の満期を迎えれば、一子につき240万円が支給される保険です。高校の入学金や進学資金を会社がつくってくれるというのは、大きいと思います」(雨宮さん)

他にも、女性を対象に、認可外保育園に入園する場合は5万円まで保育料の補助が受けられたり、ベビーシッターを利用する際には割引が受けられたり。こういった金銭的な補助の充実は、実際に仕事をしながら育児をするときにはとてもありがたいでしょう。ただ、そうなると外部サービスを利用しやすいという利点はあるものの、やはり働き方自体を調整することは難しいのでしょうか? 一方では、そんな疑問も湧いてきます。

テー・オー・ダブリュー 取締役兼執行役員 第三本部長 雨宮淳平さん

役員との1on1や選択肢を広げる人事制度で、女性の活躍を支援

現在、テー・オー・ダブリュー社員の男女構成比は、男性7:女性3。女性の働きやすさは多くの会社で経営の重要課題であり、同社においてもそれは例外ではありません。

「2023年度の会社全体の方針として、社員一人ひとりが活躍できる環境にしていきたいと考えています。もともと、年齢や性別といった属性によらず、社員全員が平等にチャンスを与えられ、公平に評価される仕組みをつくっていますが、中でもより女性社員が活躍していくために、出産・育児に関する制度は更に整えていく予定です。ただ、制度の有無に関わらず、個別のニーズには柔軟に対応できる方がよいとも思っていて。そうした取り組み・実施例も徐々に増やしているんです」(雨宮さん)

家庭や育児とのバランスなど働き方の変化を求める女性社員に対して、役員・部門リーダーは、月に1回の1on1を設け、仕事の状況や働き方に関する具体的な希望などを聞いているといいます。例えば、出社での勤務を基本とする同社でも育児をしながらフルリモートで働いている女性社員がいたり、夜間の対応が発生しない案件のみを対応する女性社員がいたり。また、チーム体制は柔軟に運用しているそうで、ダブルプロデューサーでやることもあれば、メイン・サブの2名体制を取るなどの調整もしています。

2022年7月には、等級や職種とは別軸で、「職群」として勤務時間や仕事のボリューム、種類を調整する選択肢が制度化されました。例えば、勤務時間をコントロールしたい社員は、「職能給は少し減るものの、顧客対応業務が少なく社内プロジェクトの比率が多い」職群を選べます。

子育てや介護などのライフイベントに対応する際はもちろん、それ以外でも自分の働くスタイルに合わせて選択できます。人事評価の面でも、業務量そのものではなく、職能ごとに求められるミッションへの達成度に応じた公平な評価が受けられるため、働き方やキャリアの希望がより実現しやすくなりました。

こういった多彩な勤務ができるようになった背景には、オンラインイベントやSNSでの情報発信といったフィールドの業務が拡大し、さまざまな役割がつくれる環境になってきたことも挙げられます。

また、同社では、役員から一般社員までが参加する社内プロジェクトを立ち上げて、女性の活躍を支える取り組みの更なる検討を進めているといいます。これまでに、他社との情報交換や女性活躍をテーマにしたワークショップへ参加。今後、社内でのセミナーなどの実施を考えているそうです。

そのプロジェクトに当事者として参加している横山さんは、顧客体験マーケティング室でプロデューサーを務めています。2022年に結婚したのを機に、面談をしながら、仕事を選んだり関わり方の調整をしたりしているところです。

テー・オー・ダブリュー 体験デザイン本部 顧客体験マーケティング室 プロデューサー 横山史穂さん

「課題の1つは、若手、特に女性のキャリアプランが見えづらいところです。20代から30代の若手女性社員が活躍する中で、結婚したり、子育てしたりしながら働き続けるビジョンが持てるように、段階に合わせて選びながら働ける環境を整えていきたいなと思っています。プライベートと仕事の両立に悩み、どうしても声を上げられずに諦めて退職を選ぶ人はまだいます。そういう人たちのことも視野に入れて、制度なのか手当なのか、選択肢を増やすことを考えています」(横山さん)

同社ではこれまでも、上長との対話によって個々の事情をくみ取って個別に環境を整備するケースは少なくなかったといいます。現在は管理部門で働く渡邉さんも、プロデューサーとして働いていた時に第一子を妊娠・出産。当時は、結婚や出産をきっかけに退職するのが当たり前の時代でしたが、育児休業を1年取得して、現場に復帰しました。

当初は時短勤務をしていたものの、法定通りの上限2年間が過ぎたあと、2歳の子どもを育てながらのフルタイム勤務はとても無理。そう感じて、時短勤務を保育園卒業までの期間に変更してもらったといいます。

更に、いざ子どもが小学校に入りフルタイムに戻ってみると、それはそれで育児との両立が難しい状況がありました。というのも、小学校は終わる時間が早く、学童へ通わせるもののそれでもまだ帰宅時間が早い。宿題も多くて、手がかかる。フルタイムは難しいと改めて上長へ伝えたら、「では、いつ頃まで時短勤務が良い?」と聞かれて、小学校3年生まで伸ばしてもらったそうです。子どもが小学校3年生に上がった頃には、少し手が離れて、更に給与面も元に戻したいと思うようになり、フルタイム勤務に戻しました。

一括りに「産休・育休からの復職」と言っても、時短を希望する方、フルタイムで働きたい方、仕事のボリュームや責任を少し抑えて働きたい方など、働くスタイルの希望は人それぞれです。制度があれば使いやすいけれど、個別の希望がかなうのであれば、その方が本当は働きやすいのかもしれません。

渡邉さんは第二子を出産し、また第一子の保育園や習い事など土日の行事も増えてきたことがきっかけで、管理部門への異動を希望。希望がかない、現在もコーポレートサービスチームで働いています。

テー・オー・ダブリュー コーポレートサービスチーム ディレクター 渡邉小優美さん

「私の一番下の子は、もう高校2年生です。手をかけなくてよいので、今は仕事に対して私自身がフルコミットできる状況です。男女を問わず、長く働いているとその時々のライフスタイルに合わせて、働き方を調整したい時期というのはあると思います」(渡邉さん)

育児だけでなく、介護や家族に対するケアに対しても、1on1で執行役員や本部長が真剣に受け止めて、それに合わせて離職しなくてもよいように活躍を支える制度を検討しています。同社では、時短やフルリモートで働く女性の人数はまだそう多くはないものの、家庭と仕事を両立していきたいと考える社員をみんなが応援しているのです。

普段から話しやすい雰囲気をつくり、社内コミュニケーションを大切にする

テー・オー・ダブリューのプランナーが新しい働き方を模索したり、女性の活力を伸ばしたりしていきたいと手を挙げて、あえて分社化した事例があります。

「株式会社いろいろ」は、女性だけのプランニングブティック。2023年7月3日に設立・営業を開始しました。代表取締役社長は女性で、もう一人のメンバーも女性です。

そのような形もあれば、足元では話しやすい雰囲気や居心地のよい環境を作るための取り組みも大切にしているといいます。同社では、管理栄養士が監修したお惣菜が1品100円で購入できる福利厚生サービスを導入したり、朝食無料サービスを提供したり。ラウンジを中心に、社員同士が集まれる場を積極的に用意しています。

また、毎週水曜日には、具体的な仕事のノウハウなどを情報共有する「ONLINE WEDNESDAY」を開催。座学のセミナーだけでなく、ノンアルコールビールや軽食も用意されて、メンバー同士の懇親にもつながっているといいます。

顔の見えている関係性だからこそ、若手からベテランまで社員同士で助け合えたり、そこから目の前の壁を乗り越えるヒントが得られたりするのでしょう。その延長線上に、ここで働きたいと思う気持ちを伝えたり、仕事を続けるために困っていることが相談できたりするのかもしれません。「言いたいけど言えない」と思う人の気持ちもわからなくはありません。単なる自分のわがままなのかなと、思ってしまうこともあると思います。でも、制度にないことは対応できないという会社ばかりではないのだと、お話をうかがい、改めてわかりました。ありがとうございました。

社員同士の情報交換や交流を目的とした社内イベントのポスターがラウンジに貼られていました

【インタビュアー】シキノハナ

編集者・ライター 兼 華道家。東京都出身。ビジネス雑誌の編集長を経て、複合サービス企業へ転職。約16年間にわたり、広報を軸とした企画業務に携わる。現在はシキノハナを主宰。仕事に、家事に、育児に…と、忙しい女性を心からリスペクトし応援する。
<ホームページ> https://shikinohana.com/


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