しゅふクリ・ママクリ

キャリアコンサルタントに相談する
MENU

女性活躍社会で最も必要なことは、”働く女性の意識改革”—ラッシュインターナショナル

名古屋に本社を構えるラッシュインターナショナルは、女性視点でクライアントの課題解決をおこなう、販促支援コンサルティング会社です。経済産業省が発表する「ダイバーシティ経営企業100選」や「あいちファミリーフレンドリー企業」の表彰を受けるなど、女性活躍社会のロールモデルとして注目される同社に“女性が働きやすい環境のつくり方”や“社員の働き方”についてお話を伺いました。

まずは御社について簡単に教えてください。

そうですね…「困った時に、声かける屋」です(笑)。”Web屋”ですとか、”入力屋”ですとか、言えるとわかりやすいのですが、そうではなく、クライアントのいま困っていることに対して「じゃあ、それやります!」と対応していく会社です。また、ほとんどが女性社員だということが強みでもあります。企業の決済権者はまだまだ男性のほうが多いと思います。それに対して、「絶対、こっちのほうが良いと思います」「これだと買わないけど、こっちなら買います」といった、“女性目線”をクライアントに伝えています。

やはり「女性だから」というのはメリットが大きいですか?

女性って視点が広くて、深くて、得することが多いと思いませんか? たとえば、男性に「昨日の奥さんの洋服言えますか?」と聞くと答えられない。でも女性は旦那の服やネクタイをちゃんと見ていて答えられる。こうした男性にはない視点を持っていて、見ている幅や見ている部分が違うんです。だから「当社は女性だけの研ぎ澄まされたマーケティングを提供できます」といった説得力のある訴求ができます。

たしかにおっしゃる通りですね。ではどのような経緯で会社を設立したのか、そしてどのようにして女性チームができあがったのかを教えていただけますか?

前職では、トヨタ自動車で販売促進に関わる仕事をし、そこでマーケティングや、販売について勉強しました。その後、24歳の時に結婚退職しました。若いし、友達もまだ働いていたので、マイクロソフトの資格などを取得して、パソコンのインストラクターになったことが起業のきっかけです。フリーラインスで、メーカーやIT企業が主催する、いわゆる企業向けのクラスでの講座を任されていました。その時、私は「この会社にはこんな内容を教えたほうが仕事で使えていいのに」といったことがどんどん湧いてきたのですが、「いろんなことを考えないで、テキストに沿ってそれだけを教えてくれれば十分だよ」と言われていました。ただ、もっと役に立てるのに、どうして留めておかなきゃいけないの? と感じてしまって、思ったことを思ったように実践するためには自分でやるしかないと思い、起業しました。

では最初はPCインストラクターとして個人事業主だったんですね。その後、どのようにして、いまのような組織になっていったのですか?

1人目、2人目と子供を産んだ後も、フリーランスのインストラクターとして働いていたのですが、パソコンを教えるという講師業や教室はいずれなくなると感じていました。だから、ずっとこれをやっていこうとは思っていませんでした。そうしたなか、独立してお金もなくて教室を構えられなかったこともあり、企業に自分が出向いて教えていたのですが、企業のなかにはいっぱい仕事があるということが見えてきました。ちょっとした入力業務を正社員が片手間でやっているのを見つけては、「私たちにやらせてください! もっと安く、早く、正確にやります」とお手伝いを買って出ていました。また「パンフレットをつくりたいんだけどできる?」「外国語での入力ってできないかな?」など先方から相談があると、断ることをせずにインストラクター仲間に相談するなどやれる方法を探して対応していました。

その時に一緒にやっていた仲間がそのまま社員になったということですか?

そうです。みんな女性で、子供がいる人ばかりでしたので、最初はパートみたいな感じでしたが。私自身も、0歳と2歳の子どもがいるなかでの起業だったので、ちゃんと育児しながら働ける環境にする必要がありました。今日は遠足だから休むとか、運動会だから休むとか。最初は、ゆるい感じでしたね。

みなさんお子さんがいらっしゃった状況だったんですね。設立した時点で”女性が働きやすい会社”ではあったかと思うのですが、『制度』がしっかりしているわけではなかったんですね。

そうです。やれることをやれる範囲と方法でやるという感じでした。女性活躍推進が叫ばれるようになって「どうやって制度をつくってきたのですか?」といった質問をよくされますが、制度とか風土とかではなく、やれることをやってきただけなんです。起点はそこです。

そういうところから始まっているんですね。

別に、ああしようこうしようと思って制度を整えたのではなく、「そうでなければやれなかった」ということを後々人数が増えて改めてルールにしているだけなんです。「いままでなんとなくOKだったものを、なんていう名前の制度にする?」みたいに。ファジーだったものをきちんとしなきゃいけないくらいのことです。たとえば、「子供行事休暇」という名前にしようとか、です。

制度を整えていくなかで苦労した点はありますか?

まずは、クライアントに理解してもらいたい、と思いました。取り引きを始める前に「独身の社員ばかりでしたら夜でも土日でも対応できるかもしれません。けどうちは子育て中の母親ばかりの会社なので、そうはいきません。それでもいいですか?」ということをちゃんと説明するようにしました。それを伝えて、「いいですよ」と返答してくれる企業とお付き合いをしています。こちらもワガママを言っていることは理解しています。ちょっと不自由な私たちにも関わらず仕事を任せていただいているので、クライアントのためになることを一生懸命やって、クライアントが困らない状態だけはつくろうという思いでやってきました。

社外にも伝えることで、環境を整えていったんですね。社内的にはどうですか?

子育てを経験した身としては、保育園の子どもを抱えている社員の気持ちがすごくわかるんです。このため、「いいよ、まだ子どもが小さいんだから4時半に帰りなよ」みたいなことを私が思いつきで言ったりして、すごく良い社長のつもりでいたんです。けど、ある時その子から「社長、そんな思いやり私いいです。辛いです」と言われてしまったのです。「みんながすごく必死で働いてるなかで、私だけ4時半に子どもがいるのでお先に失礼しますと言って帰るのは辛いです」と。私だったら喜んで帰るのですが、いろんな人がいるんだな、社長である私の鶴の一声だけでなく、周りの環境が整っていないと、できないんだなと、そのとき感じました。それで少しずつ、みんなの意識や環境から変えていこうと決心しました。

そこから、どういう風に改善されたんですか?

まずは就業時間・残業について。最初から“おしりの時間”を決めてしまいます。いまは18時15分に会社を出ないと保育園のお迎えが間に合わない子にだけ、鍵を渡しています。そうすると彼女が、社内で残こりそうなメンバーに必死に頼むんです。「あなたが帰らないと保育園に間に合わないんです!」って。でもこうやっておしりを決めると、不思議とできるんです。これは、女性の特徴だと思うのですが、朝ご飯つくって洗濯して化粧してと、女性の朝のルーティーンワークってあるじゃないですか。同じ時間に起きたとして、7時半までにやらなければいけない時と、8時半までにやらなければならない時があったとしても、結局同じなんです。1時間で急いで終わらせるか、2時間かけてゆっくりやるかの違いです。だから業務も同じで、この時間までにやらないとダメだよと、強固に指示しています。8時間勤務だったら2時間くらいの時短は絶対できます。無駄なことをやっていないかをきちんと見てあげて、おしりに火をつけて必死に髪振り乱して(笑)やれば業務量を変えずに1~2時間くらいの時短は誰でも絶対できます。女性は特にそれができると私は思っています。

次に社員の働き方について。これは給与形態でいくつかのパターンを用意しました。早く帰る子のためのパターン、子どもがいても頑張れるならフルタイムのパターン、さらに働く時間に縛られない成果報酬のパターンなど、自分のライフスタイルと能力に合わせて変更できるように変えていきました。仕事ができていないのに高い給与をもらっていたら不満が出ます。また頑張って成果を出しているのに給与が低くても不満になります。自分でパターンを選んで、評価も明確だと、だれも文句を言いません。このように10年ぐらいかけて、制度をつくり、開示して、意識改革をし、やっと馴染んできたところです。

「女性活躍推進」や「女性の働き方」が世の中のキーワードになってきていますが、この流れについてどう感じていますか?

私にとっては追い風で、女性活躍の制度づくりに取り組んでいる会社として賞をいただいたり、テレビや雑誌に取り上げてもらって認めていただいたりと、素直に嬉しく感じています。ただ国、県、市というイチ会社よりも大きな単位で「女性活躍」を進めようとした際には、制度だけを用意すればいいというわけではないと思っています。それよりも、『女性の意識改革』が圧倒的に必要です。働く側の意識改革です。子どもがいるから甘えていいという風になってはいけないんです。「今日は早抜けしてごめんね」という時に「いいよ、早く帰りな」って言ってもらえるような自分になることが大事なんです。世の中でいろいろと議論されているなかで、ここが抜け落ちていると思っています。当社では、「良い思いがしたいのなら、できることを増やしなさい」と社員にずっと言っています。働く女性に優しい風潮になろうが、やっぱりできない人はいい目にあってはいけない。いつも頑張っているからこそ、「子どもが熱出しているなら、こっちで残りはやっておくよ」となるわけで。いつも迷惑ばかりかけているなかで、「子どもが病気なので帰ります」と言われたらやっぱり誰だって納得できませんよね。公正公平でないと。だから日頃のおこないが大事なんです。

※2017年11月に取材した内容を掲載しています。

[PROFILE]倉田 満美子(くらた・まみこ)

株式会社ラッシュインターナショナル
代表取締役

名古屋市生まれ。トヨタ自動車を退職後、フリーのPCインストラクターを経て、「主婦や母となった女性が、家庭と仕事を両立させ、自分の持っているスキルを社会に活かしながら充実した人生を過ごせるような会社を創りたい」という想いのもと、株式会社ラッシュ・インターナショナルを設立。女性視点の販促支援事業をおこなうとともに、社員の大半が育児中であっても事業運営できる体制を確立し、そのノウハウを活かし、企業の働きやすい職場環境づくり・働き方改革の支援をおこなっている。「平成23年度あいちファミリーフレンドリー企業表彰」「平成26年度ダイバーシティ経営企業100選表彰」を受賞。