しゅふクリ・ママクリ

キャリアコンサルタントに相談する
MENU

社会全体・地域全体で子育てをしていくには―認定NPO法人ノーベル

子どもの急な発熱で、保育園に預けられない。けど今日は大事なプレゼンが控えていて休めない、どうしよう。そんな経験、皆さんあるのではないでしょうか? 今回は、共働きが当たり前になり社会課題となっている病児保育問題の解決を目指す、認定NPO法人ノーベルに取材しました。PR活動をおこなう「広める部」の吉田綾さんに、同団体の取り組みや、PR活動を通しての世論形成についてお話を伺いました。

まずは簡単に、貴団体について教えていただけますか?

「子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会」をビジョンに掲げて、関西エリアにて訪問型の病児保育事業をおこなっています。子どもの急な発熱は育児と仕事の両立の最大の壁で、親御さんにとって悩みどころですよね。私たちは当日の朝に保育の申し込みがあったとしても100%お預かりしています。目的は先ほど申し上げたとおり、子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会をつくることだからです。このように社会の価値観を変えていくためにPR活動に初期段階から力を入れていました。メディア掲載のため積極的にプレスリリースを打ってみたり、子育てと仕事の両立ノウハウの啓発冊子を制作して販売したり、セミナーの講師登壇もおこなっています。

吉田さんはどういった経緯で入職されたのでしょう? それまでのキャリアについてもお聞かせいただけますでしょうか。

前職はリクルートで、関西でゼクシィの営業をしていました。第一子出産後のタイミングで元々興味のあった編集部に異動し、編集を経験しました。ただ、一子目で仕事との両立すらしんどいのに、さらに新たな環境や職種で、もう「やっちまった!」なと。9時~17時で働いて、いったん家に帰り、子どもを寝かしつけた後にまたむくっと起き上がって100本ノックの企画案を書くみたいな生活を送っていたのですが、「これ以上頑張れない!自分の体を壊しかねない!」と両立の壁にぶち当たってしまったんです。その時、ユーザー目線で病児保育を探していて、ノーベルを見つけました。こんな画期的なシステムがあるんだと知って、ここで働くしかないと直感で思いました。ボランティアでもいいので関わらせてほしいとお願いして、ボランティアスタッフとして入り、その後アルバイトになり、第二子出産をはさんで2013年に正職員として入職しました。

最初はユーザーとして出会ったのですね。そこから現在はPR活動を含む「広める部」に?

そうですね。「広める部」でマネージャーをしています。広める部は主に「病児保育の利用者向けの広報活動」、「採用活動(保育スタッフの)」、「ファンドレイジング(寄付金集め)」、あとは「システム開発」の4つに部門が分かれています。メイン担当が1人ずついて、フォローするスタッフが何人かいて、その全体のマネジメントを私がしている状況です。当初は私1人で広める部だったんですよ(笑)。

そうだったんですね! 現在は部内外含め、どのような方がいらっしゃるのでしょう?

「広める部」は割と民間の事業会社から転職してきた人が多いですね。みんなまったく広報関連の経験がなかったんですよ。ただ、情報をまとめて人に伝えるスキルや計画を推進していく力みたいなものがあったので、それを活かして今はみな活躍しています。広める部以外の話ですと、保育事業部のスタッフは、福祉・保育領域から転職してきている人がもちろん多いですね。

女性が多かったと思うのですが、ママさんも多くいらっしゃるんですか?

本部スタッフは、小学生以下の子育て中のママが5割ですね。あとは50代オーバーの頼もしいオカンも複数活躍しています。

ノーベルで働きながらサービスを利用している方もいるのでしょうか?

今はみな一般の保育園にお子さんを預けて働いていますが、会員はいますよ(笑)。元々会員だった人が、ユーザーとしてノーベルと関わっていくうちに「ここで働きたい」と思い、3名入職してくれました。

ユーザーだった方が3名も! やはり事業への共感を皆さん強く持っているのですね。

そうですね、事業や理念への共感はスタッフ全員が持っていると思います。創業間もないため、スタートアップのように勢いがあり、がむしゃらに仕事を進めていくみたいな部分もありながら、お母さんたちへの助け合いを生み出すことを目指す組織なので、人に寄り添いながら、お互いを大事にしていく組織風土かと思います。先日、病児保育利用者の4~5歳ぐらいのお子さんからのフィードバックで「将来ノーベルの保育スタッフになりたい」と書いてくれたんです。それってすごく価値のあることだと私たちは思っていて、一人の子どもにじっくり向き合って保育して、憧れの職業だと思ってもらえることに、誇りを感じています。アホみたいに「お母さんたち、子どもたちをサポートしたいんだ!」と言っているメンバーばかりです(笑) 。

『働く!!おかん図鑑』もまさにお母さんを支えるツールですよね。こちらは社内で企画されたんですか?

こういう啓発冊子って、素人、しかもNPOがつくると真面目になってしまいがちなんです。だから、プロの力を借りることにして、電通のコミュニケーションデザインチーム「おかんカンパニー」にご協力いただきました。真面目に書いてしまうと本当に涙が出るくらい辛いことが多いので、ちょっと関西テイスト入れてみるというか、笑える読み物にしています。お涙頂戴ではなく、笑って乗り越えられて、でも学べるようなトーンになるように意識しています。



辛い部分でも、「これこれ!」とうなづきたくなる面白いコピーになっていますよね。

企画自体は社内でスタートしたのですが、コピーなどのクリエイティブはおかんカンパニーの方にご尽力いただきました。私たちの活動に共感してくださったチームで、本当に助けられました。

それでは今後、チャレンジしていきたいことなどありますか?

2010年にノーベルが立ち上がって、10周年という節目が近づいてきています。これまで病児保育事業だけでは支えきれない、そんなご家庭とたくさん出会ってきました。新たな事業をはじめ、子育てしやすいまちづくりを目指します。また保育の担い手不足問題もあり、ノーベルも新規のご入会をストップしていた時期もあります。だから保育士だけでなく、子育て経験を活かし、地域のおばちゃんたちにいかに子育て支援の担い手としてチャレンジしてもらえるか、背中を押せるような取り組みを進めていこうと考えています。ノーベルでは、これまでも子育て経験済みの方が専門研修を通じてスキルを上げ、大活躍されていて、育成ノウハウのスキルはあると思っています。そこをより広げて、子育て世帯と子育てを応援する大人たちを増やして、子育てしやすい地域づくりをしたいと考えています。

世の中の空気を変える取り組みを目指していくということですね。

この話を今日まさに午前中にしていました。地域のおばちゃんたちに興味関心を持ってもらうために、コミュニティづくりが重要なのでは、という話が議題に上がったばかりです。私たちも地域に飛び出していく仕事が増えるかもしれませんね。そしてそれには、クリエイティブやコミュニケーションの力が必要だと感じています。

それでは最後に、仕事との両立を目指す主婦やママのみなさんにぜひメッセージをいただけますか?

私たち自身、本当にこの病児保育を広めることが社会にとってベストなのかと葛藤を抱えながらやってきました。我が子を他人に預けることに罪悪感を持ったり、必要以上に背負ってしまったりするお母さんもいると思います。「子どもが病気のときに休める社会」と「子どもを預けられる社会」を天秤にかけたときに、もちろん今より休みやすい社会にもしていきたいんですが、ノーベルとしては後者を支援していくんだと、強い意志を持って事業をおこなっています。子育てって1人や家族だけではどうしてもしんどい時があるので、そこで周囲に頼れる、他人に預けられる社会にしていきたいと思っています。余裕ができることで、お母さんの笑顔も増えて、それによって子どもに好影響をもたらしますから。だから、社会全体、地域全体で子育てをしていけたらいいなと、そこに共感して賛同していただけたら嬉しいです。

熱いメッセージをいただきました。ノーベルさんの今後の取り組みがますます気になります。お話ありがとうございました!

※2018年5月に取材した内容を掲載しています。

[PROFILE]吉田綾(よしだ・あや)

認定NPO法人ノーベル
広める部 マネージャー

2003年、㈱リクルート入社。広告営業・編集業務に携わり、2007年第1子出産後、子育てと仕事の両立の壁にぶつかる。2010年、「子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会」をビジョンに掲げ、関西初の訪問型病児保育を行うNPO法人ノーベルに転職。
広報マーケティング担当として利用者向け広報、行政・法人との協働、保育スタッフ採用活動、ファンドレイジング等を通じて、現在、子育て世帯約1000世帯をサポートしている。