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会社も仕事も、出産を見据えた選択だった―DMM.com クリエイティブディレクター 岩井ゆう紀さん(前編)【輝く!ママクリ】


仕事に、家事に、育児に…、忙しいけど面白い! 今、マーケティングやコミュニケーション、クリエイティブの世界で活躍しているワーキングマザーを取材します。第15回は、DMM.comのクリエイティブディレクター・岩井さん。DMM.comは1998年の創業以来、「DMM TV」などの動画配信、ゲームや電子書籍、FXや英会話、オンラインクリニックなど、60以上の幅広いサービスを展開する企業です。クリエイティブディレクターの岩井さんに、働き方の工夫や仕事のやりがい、家庭での過ごし方を教えてもらいました。前編・後編でご紹介します。

DMM.com アートディレクター/クリエイティブディレクター 岩井ゆう紀さん

子どもを産みたいし、成長もしたい

──ご経歴について、簡単に教えてください。

岩井:服飾専門学校の卒業後、アパレル業界でキャリアをスタートしました。クリエイティブ職種ではなかったのですが、途中でデザイナーになりたいと思いました。学校に通うか会社に入るかで迷っていたところ、IT業界の制作会社から運よくデザイナー職で採用。UIやグラフィック制作を行い、ディレクションも経験するなど、その会社で育ててもらいました。その後、スタートアップ企業のデザイナーを経て、2015年にDMM.comに入社しました。

――DMM.comに転職したのは、どんな経緯でしたか。

岩井:入社するちょうど1年くらい前に結婚をしました。30歳に近づいてきたころだったので、年齢的にも次の会社で身を落ち着けたいなと思って、転職を考えはじめました。ただ、好きなデザインの仕事は続けたかったので、会社として収益基盤がしっかりしていて、でもスタートアップっぽく人が型にはまっていない、挑戦できる雰囲気のある会社で、企業選びをしていきました。

DMM.comは、デジタル領域で新しい事業を次々と展開しているイメージでしたし、デザイナーやコンテンツの開発担当といったクリエイティブ職種の人数が多いのが、とても魅力的でした。前職に勤めていた頃は、新卒や若手社員が多く教える立場になっていたのですが、自分のインプットが足りないなと感じていて。なので、同じクリエイティブ職種で自分と同じくらいか、それ以上の経験と実績がある人たちと一緒に働いて、たくさん刺激を受けたいと思っていたところ、ご縁があって入社できました。

──現在は、どのようなお仕事を担当していますか。

岩井:周囲からは「社内フリーランス」とよく呼ばれるのですが、いろいろな事業部の仕事を担当させてもらっています。今担当しているひとつに地方創生事業があるのですが、クリエイティブディレクターとして、シティブランディング・プロモーションの全体戦略や施策を考えたり、自治体の課題解決につながる企画を担当させていただくこともあります。

例えば、石川県加賀市の地方創生事業では、観光プロモーションのコンセプトメイクやコンセプトメッセージの設計を担当しました。北陸地方は1年を通じて雨や雪が多いのですが、その特色を活かして観光客を誘客する企画です。加賀温泉郷をイメージしたオリジナル傘「加賀彩傘(かがいろがさ)」を制作して、市内の宿泊者に無償で貸し出すといった施策を行いました。加賀の伝説の動物や伝統的な模様をプリントした傘を使ってもらい、雨や雪の日でも楽しい気持ちで観光してもらうといった提案です。

また、「DMM TV」のロゴやサービスブランディングなども担当しました。サービスを誰に届けるか、どういう価値があるサービスなのかを言語化したり定義したりして、「DMM TV」の世界観をデザイナーと一緒に目に見える形にしていきました。

復帰のタイミングでやりたかった現場の仕事へ

──育児休業はどれくらいの期間を取得しましたか。

岩井:1月に出産して、3カ月後の4月には職場復帰したので短い方だと思います。実は出産前から保育園を決めていました。子どもがすごく多い地域に住んでいて待機児童も多く、早く探したほうがよいと周囲のパパママから聞いていたからです。1月生まれとわかった時点で認可保育園は難しいかなとも思い、自治体の認定保育園などまで選択肢を広げて、大きいお腹を抱えながら見学しました。職場復帰前にギリギリ首がすわったくらいだったので、後ろ髪を引かれながら保育園に預けましたね。

──職場復帰の際の心境はどうでしたか。不安はありましたか。

岩井:「やったー、仕事ができる」っていうのが大きくて。不安は特にありませんでした。

産休を取得する前は、役員直下の事業本部に所属し、いろいろな事業部に所属するデザイナーたちをマネジメントする立場でした。私自身、マネジメントは向いてはいたけれど、やっぱり手を動かしたいし現場に出たい。でも現場は納期や締切がある仕事なので、出産で急に離れると影響が大きいし、周囲にすごく迷惑をかけてしまうかもしれないなと、出産前は思っていたのです。

そうやって、どこかで私生活を見据えながら、それでもやっぱり現場で働きたいという気持ちもあり。ちょうど産休でマネジメント職には後任の方が入ったこともあって、職場復帰のタイミングでデザインの現場への異動を希望しました。

──復帰の際の会社のサポートでよかったと感じたのは、どんなことですか。

岩井:まだコロナ禍前だったのですが、リモート勤務をさせてもらえて、とてもありがたかったです。復帰が早かったため、駅まで歩いたらヘトヘトになってしまうくらいの体力しか戻っていなくて。

その後、コロナ禍で緊急事態宣言が出た時に、医師や警察官などエッセンシャルワーカーの親を持つお子さんしか、保育園で預かってもらえない期間が何回かありました。その際に、有給休暇とは別に休暇を取得できる、特別休暇制度があったのもとても助かりました。当時は子どもがまだ1、2歳で、1人で遊ばせておけない年齢だったので仕事もできず……。

コロナの時が唯一と言ってよいくらい大変な時期でしたが、会社のサポートもあって、なんとか乗り越えられました。

【この記事は前後編です:後編はこちら「子どもの人生も私の人生も一度きり。だから一緒に楽しむ」】


【執筆者プロフィール】シキノハナ

編集者・ライター 兼 華道家。ビジネス雑誌の編集長を経て、複合サービス企業へ転職。約16年間にわたり、広報を軸とした企画業務に携わる。現在はシキノハナを主宰。仕事に、家事に、育児に…と、忙しい女性を心からリスペクトし応援する。
<ホームページ> https://shikinohana.com/

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