夢を叶えて、本当に好きなことを仕事に―白泉社 LaLa編集部主任 松本恵里佳さん(前編)【輝く!ママクリ】
高校生から志した漫画編集の道へ
──ご経歴と現在の仕事を志望した理由について、簡単に教えてください。
松本:2015年に新卒で白泉社に入社して以来、ずっと『LaLa』の編集担当で、今年で10年目になります。
漫画編集者になりたいと思ったのは高校生の頃です。それまでは、漫画を読むことが一生の仕事になったら幸せだな、ぐらいに思っていました。ですが、高校の恩師が、出版社の雑誌編集者から学校の先生になったという経歴を持つ人でした。編集という仕事があることを教えてくれたのもその先生で、すごく影響を受けて、進学先には先生の出身大学を選びました。
ただ、漫画編集を志望したものの、そもそも漫画を扱う出版社はすごく少なくて。就活にも苦労していたのですが、白泉社から内定を頂けて、無事、漫画編集になることができました。
──LaLa編集部では、どんなお仕事をしていますか。
松本:現在、編集部は編集長以下9名の体制です。編集長1名、副編集長2名、主任が2名、編集者が4名です。編集者の仕事というのは、ポジションや役割によってもかなり変わると思いますが、私がいま担当しているのは主に5つの仕事です。
1つめは、漫画作品へのフィードバックです。皆さんがイメージするような漫画編集の仕事ですね。下絵だったり原稿だったり投稿作品だったり、さまざまな段階でのフィードバックが大きな仕事です。
2つめは、作家さんや掲載作品に付随して発生する業務です。これは、原稿の進捗管理、校了やコミックス作業、作品グッズの製作や監修、雑誌掲載記事の作成など、多岐にわたります。
3つめは、今ちょうどアニメ化する作品を担当していて、その監修業務です。これは担当作品によってある人とない人がいますし、場合によってはゲームだったり映画だったり実写化ドラマだったり、さまざまな形があると思います。
4つめは、月2回配信する電子雑誌『異世界転生LaLa』や、漫画賞の統括業務です。漫画賞とは、新人作家さんの発掘を目的として行われる作品公募のこと。LaLaでは現在、「LMG(ララまんがグランプリ)」と「LMS(ララまんが家スカウトコース)」、そして漫画投稿サイト「マンガラボ」内の「ラララボ!」でコンテストを行っています。
最後の5つめが、新入社員の教育係です。編集者として育てるため、隣の席から逐一教えています。
育児を通じて、自分の原点に立ち返る
──お子さまは、何歳のときに出産しましたか。育児休業はどれくらいの期間、取りましたか。
松本:子どもは2人で、第一子が26歳、第二子は29歳の時に出産しました。第一子の育休はちょうどコロナ禍で延びまして1年4カ月、第二子の育休はちょうど1年間でした。
漫画編集は作家さんのマネージャーのような仕事で、常に作家さんや作品進行を見る必要があるため、産休・育休前に担当だった作家さんは他の編集者に引き継いでいました。そのため、戻ってきたら自分で担当する作家さんを新たに見つけなければならなくて。同じ部署に戻ったといえども、新規業務でしたね。正直、愛していた作家さんの担当から外れるのは、寂しかったです。今は、約30人の作家さんの担当をしています。
──職場復帰の際の心境はどうでしたか。不安はありましたか。
松本:育休明けで復帰した際は、不安は特になかったです。長い休みが終わったということで、夏休み明けのような気持ちで「また始まった!」ぐらいに思っていました。一旦やってみよう、何か起こったらその時に対処しようと考える、結構楽天的な性格なんです。
ただ、体力は心配だったので、育休の終盤から身体を鍛えて、職場復帰に備えました。編集者は体力が必要な仕事なので。
それと、第一子の産休・育休から戻ってきた時は、編集長も副編集長も変わって、さらに新入社員が増えていて。休む前からいるメンバーは、ひとりしか残っていませんでした。まるで、新しいクラスになったようで(笑)。そこはなんだか落ち着かなかったですね。
──会社のサポートでよかったと感じたのは、どんなことですか。
松本:ちょうど第一子の出産がコロナ禍だったのが幸いしたのか、復職したら在宅勤務のための環境がすごく整備されていて。ノートパソコンはもちろんのこと、社用スマートフォンも支給されました。また、大容量のファイルを管理・共有できるクラウドストレージも利用できるようになったことで、とても助かっています。もう、それ以前の世界には、戻れません(笑)。
加えて、部署の雰囲気は編集長がつくっていると思いますが、編集長自身もきちんとお休みを取る方で。誰が休みを取っても問題ない雰囲気をつくってくださっていると感じます。
──出産前と出産後で変わったことはありましたか。
松本:子どもの保育園の送迎や食事づくりなどは増えましたが、働き方はそこまで大きく変わってないです。
社内では時短勤務の取得も珍しいことではなく、利用する先輩もいらっしゃいます。現在、私自身はフルタイム勤務をしていますが、編集職はもともと、かなり柔軟に働ける環境のため、困ったことはありません。
そういえば、育児を通じて、自分が子どもだった頃の気持ちをよく思い出すようにはなりましたね。子どもに絵本を読んであげるときに、「あ、この物語好きだったな」とか。改めて自分の原点に立ち返れるというのはいいなと思っています。
【この記事は前後編です:後編はこちら「しっかりと体力を維持して、長く仕事を続けたい」】
【執筆者プロフィール】シキノハナ