デザイナーの夢を捨てず、たどり着いた私の仕事【ママ訪問】
デザインとは関係のない経歴
──これまでのご経歴について簡単に教えてください。
大学卒業後、就職した電機メーカーでは営業企画部に配属されました。業務内容は主に企画提案書を作成するなど、営業事務的なことが多かったです。その後にご縁があって、システム企業で広報の仕事に就きましたが、ちょうど1年後に妊娠し、退職しました。
出産してから、就職活動をしましたが、子育てのため勤務時間が長く取れそうになく、条件が合わず苦労しましたね。結果として、とにかく今は子育てと両立できる仕事をと考え、仕事内容よりも通勤時間と勤務時間が合うことを最優先に仕事を探し、自宅からもそう遠くないパートタイムの仕事に就きました。6年半パートタイムで働きながら、フリーでデザインの仕事も受けたりしていました。
そして、子育てが一段落したタイミングで、デザイナーとして就業したいと一念発起し、現在は、マスメディアンから派遣でレジャー施設のインハウスデザイナーとして働いています。
──どのようにしてデザインに興味を持たれたのでしょうか?
最初に勤めていた電機メーカーで任されていた、企画提案書の作成がきっかけです。PowerPointから派生して、ちょうど注目され始めていたIllustratorを使うことになりました。独学で使い始めたのですが、ここが私とIllustratorとの初めての出会いです。
提案書のデザインや、視覚効果に訴える資料にこだわりたくなり、興味が高じてすぐにDTPスクールに通い始めました。Illustrator、Photoshopなど、基本的なことはここで学びました。徐々に私の中でデザインへの探求心は大きくなっていきましたが、会社が求めているのはデザインではないこともわかっていました。
結婚を機に退職した後もDTPスクールに通いなおし、アップデートを図りました。デザインの仕事がしたい、デザインには常に携わっていたいという思いが強く芽生えてきたのもこのくらいのときからです。
結婚退職後、違う職場で1年間広報を担当しました。このときは、Illustratorの知識もあったことから、サイトのリニューアルや展示会で使うパネル制作なども経験しました。
その後2人の子どもに恵まれ、パートタイムで受付業務をしながら、知人のカフェでデザインのお仕事をしていたわけですが、デザインへの興味は尽きなかったですね。常に学んでいた気がします。
忘れられなかった思い「私はデザインが好き」
──就職活動について伺います。実際に活動してみていかがでしたか?
子育ても一段落し、コロナも落ち着いてきた2022年3月ごろに、就職活動をしてみたいという気持ちが大きくなりました。子どもが大きくなってきたことや、夫も私が働くことに前向きでサポートすると言ってくれたことも心強いスタートになりました。
そこでまずは、デザインに関する仕事に絞って就職活動を始めました。5カ月に及んだ就職活動期間でしたが、いろいろと困難がありました。
やはり私の経歴にデザイナーとして勤務した履歴がないことがネックになり、就職活動に大きな影響を与えていたと思います。はっきりと、「対象ではない」と言われたことも何回もありました。また、残業も難しかったため、勤務時間など、考慮したい就業条件も多かったため、そもそも条件に合うデザイナー求人が見つからず、もしかしたら今回も自宅近辺で、デザインと関係のないパートタイムの仕事しかできないのではないかと何度も諦めそうになりました。
──そういった状況下で、現在お勤めのレジャー施設に応募してみようと思われたきっかけは何だったのでしょうか?
やはりこの機会を逃せない、と実感したことでしょうか。
デザイン関係の仕事では、フルタイムに加え、月の残業時間が20時間以上のケースが多いと思います。子どもが大きくなったと言っても家庭との両立もあるし、勤務時間についてはやっていけるだろうか、という不安が常にありました。
できれば週4日ぐらいの勤務で、時短勤務、残業も少ない方がいいと考えていました。デザイナーとしては限りがあるお仕事探しでした。
そのときにマスメディアンの担当者の方からレジャー施設の派遣求人をご紹介いただきました。仕事内容を伺ったところ、とても興味が湧きました。今まで私が思い描いてきたとおりのデザインのお仕事だったのです。
ただ、私の自宅から勤務地が遠く、通勤時間が長いことだけが気になり、長く勤められるのか悩みました。でも以前から希望していたデザインの仕事で、希望する勤務条件をほとんど満たしている。しかもこのタイミングを逃したらもうチャンスはないかもしれない、そう思ったとき応募するしかないと強く感じました。
私の当初考えていた条件は、あまり遠方へ働きに行くプランではありませんでしたし、今回こうしてマスメディアンさんからご紹介いただかなければ到底めぐり会えなかったお仕事だったと思います。自身で活動しているだけでは探せなかった。とても感謝しています。
──就職活動中のお話を伺います。何か工夫されたことはありますか?
デザイナーのお仕事探しには、ポートフォリオの作成が重要かと思います。私も用意しましたが、デザイナーとしての経験値も少なく、作品数も少な目だったと思います。ですので、それぞれの作品について、こだわったポイントを詳細に記載することを意識しました。また、アウトプットだけではなく、お客さまからのフィードバックもポートフォリオに盛り込むようにしました。
私は、採用されるためには、デザインスキルありきで考えていたのですが、現在の上司に言われて驚いたことがあります。私の経歴の中の「商品を売るための提案書を作成していた」経験を評価してくれていたそうなんです。そういった経験に期待していると。
「売れるものをつくってほしい」という会社のニーズと、どちらかといえば事務的な提案書の作成という私の経歴が合致したわけですが、私にとっては思いもよらない展開でした。当時の営業企画部での経験がここで活きたことは驚きでした。
──現在のお仕事内容・働き方について教えてください。
レジャー施設のインハウスデザイナーとして、主に飲食関連のデザインに携わっています。
勤務形態としては、週4日勤務しています。うち1日は在宅勤務で、10時から14時までの4時間、自宅で作業しています。3日間は出社し、10時から17時まで働いています。
在宅勤務では、出社時と変わらない作業内容で働いています。勤務時間中はデザインに集中し、連絡やデータのやり取りにはネットを使うなど、不自由のない勤務体制です。
──お仕事と家庭を両立するにあたって、工夫していることはありますか?
お仕事が決まった当初は両立にあたって、試行錯誤がありましたね。家族の中で私の家事労働の比率が高いと感じていましたし、それが今後大きなストレスになるかもしれないと危惧していました。
そこで、Excelを使い、家事内容をすべて可視化してみました。シビアに見える化することで、夫も家事を分担してくれていることがわかり、感謝にもつながりましたし、何を分担すべきか明確になりました。このやり方で家事分担のモヤモヤがなくなりスッキリしました。心の負担もだいぶ軽くなりましたね。
食事については、1週間分を週末にまとめてつくって保存し、時間がないときは子どもたち自身が温めて食べられるようにしています。
続けていたことで、チャンスに恵まれた
──Sさんのキャリアにおいて、具体的な転機となるものはありましたか?
デザイナーとしてお仕事をしたい、これがやりたかったのだ、と強く感じたのは知人が経営するコワーキングカフェでデザイン業務を請け負い、初めて対価として報酬をもらったときでした。デザイナーとして形に残る実績がつくれたこと。これは大きな転機だったと思います。
このカフェでは、知り合ったデザイナーの方が先生となってくださって、学校とは違う実践的なアドバイスをいただき、大きな刺激も受けました。
──これからの働き方に対する展望はありますか?
提案書をつくっていた経験もあるので、やはり何かをつくるならば、売り上げにつながることが結果として最重要だと思います。対象となる相手に、ビジュアルだけではなく、伝わる言葉をセットで考えられるデザイナーになりたいと考えています。限られたスペースの中で、伝えたいことを表現して完成させる、そういった仕事をしてみたいですね。
──最後に、クリエイターを目指しているママさんへ一言メッセージ・アドバイスをお願いいたします。
私も、妊娠や出産など、家庭と仕事の両立に困難を感じて、諦めそうになったことが何度もありました。その中でも、デザイナーへの夢を捨てず、チャレンジしながらコツコツと進んできた結果、気が付けば今こうして、デザイナーのお仕事にめぐり会えました。
さまざまな生活の変化もあると思いますが、少しずつでも実績を重ねて進み続けることが大切なのではないでしょうか。
寄り道をしてしまったと悩んだときもありましたが、結果として好きなことであるデザインをずっと追求してきたことで、チャンスに恵まれました。マスメディアンさんとの出会いも大きかったです。こういう道を歩んで来て、やりたいことにたどり着くこともあるのだと実感しましたね。
以前のパートタイムのお仕事は、勤務時間終了と共にスイッチが切り替わって本当におしまいでした。それが今では、街を歩いているときでもこれは参考になりそうとアイデアを集めたり、寝る前に作品を見直したり、就業時間外にも仕事のことで楽しいと思う瞬間が多々あります。
出産や子育てをしながらの就職活動はとても大変だと思います。諦めずに学びを止めないでチャレンジを続ける。皆さんの夢もきっとかなう、そう思います。
──お話、ありがとうございました! これからも「しゅふクリ・ママクリ」では、ママクリエイターを応援していきます。
※2023年4月に取材した内容を掲載しています。
【インタビュアー】しゅふクリ・ママクリ編集部
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