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仕事が大好きなフリーランスのママデザイナー、いままでとこれから(前編)【ママ訪問】

「ママ訪問」では、ママクリエイターにリアルな働き方を語っていただきます。今回は、フリーランスのアートディレクター・デザイナーとして活動しているTさん(匿名)にお話を伺いました。仕事との向き合い方、これからの展望について、前編・後編にわたってお届けします。

グラフィックデザイナーに憧れてキャリアをスタート

──これまでのご経歴について教えてください。

美大に通っていたころから、華やかな広告業界に憧れてグラフィックデザイナーを目指していました。大学卒業後は、大手広告制作会社に入社し、グラフィックデザイナーとしてのキャリアをスタート。大手広告会社のアートディレクターのもと、広告デザインのイロハを学びました。

その後、化粧品会社の宣伝部へ転職し、自社ブランドの広告・販促物の企画からデザインまで担当していました。

そして、ほかの業種にも携わりたいという思いが強くなり、広告会社へ転職。アートディレクターとして、多種多様な業種の広告をつくっていました。2006年ごろに、会社の体制が変わり、希望する仕事ができなくなりそうと感じたことを機に、会社を辞めて、フリーランスとして活動を始めました。クライアントにも恵まれ、運良く現在までフリーランスを続けています。

──フリーランスになられてからお子さんが生まれたのでしょうか?

フリーランスになってから、子どもを2人出産しました。会社に所属していたころは、仕事がとても忙しく、徹夜も普通で、毎日終電で帰り、家では寝るだけという生活でした。広告会社で働きながら、子育てを両立するのは難しいと感じたので、思い切って会社を辞めたという経緯もあります。

また16年ぐらい前は、いまほど労働環境が整っていませんでした。自分の意識のなかでも子どもを生んで、この仕事を続けるのだったらフリーランスになるしかないなと思ったんです。

ありがたいことに、知り合いの方からたくさん仕事をいただくことができ、フリーランスを始めたころは徹夜もしながら、会社員だったときと変わらないぐらい忙しく働いていましたね。自宅で仕事をしていたので、時間の境目がなくなってしまって……。

そして、フリーランスになって2年ぐらい経過したころ、第一子を授かりました。仕事は妊娠期間中から生まれる直前まで続け、出産してから2カ月後には再開していました。当時は保育園も入りづらい時代でしたので、生まれる前からインターネットで情報収集をしていましたが、結局、保育園に入れませんでした。そのため、民間のベビーシッターに1日4時間子どもを預かってもらったり、夜は夫に子どもを見てもらったりして、仕事をしていました。生後10カ月ぐらいからは、行政サービスを利用していましたね。

そうこうして4年後に2人目が生まれたのですが、そのときは保育園に入れるまでの10カ月間、育児に専念しました。1人目の子どもはすでに保育園に入っていて、自分の仕事のペースもつかめていましたし、あまり急いで仕事を再開しなくてもいいのではないかと思ったからです。

育児と仕事の両立。フリーランスだからこその葛藤

──大変忙しく、育児と仕事を両立されていたのですね。それでもフリーランスでデザイナーを続けていたのには、なにか思いがあったのですか?

収入の面もありますが、一度デザインの仕事を辞めてしまうと、また現役に戻るのは難しいのではないかと思ったからです。グラフィックデザイナーは使用しているソフトも数年間でバージョンアップされたり、新しいソフトが誕生したり、いろいろと変わります。子どもの手が離れて、いざ仕事を再開しようとしたときに、デザイナーとして時代遅れになっている怖さがありました。

また、幸いなことに、仕事を頼んでくださる方が途切れなかったので、ずっと続けてこられましたが、フリーランスは、クライアントとの関係が一度切れてしまうと、それっきりになりがちなので、やはり続けていることが大事だと思いました。

──2人目のお子さんが生まれたとき、育休のように仕事をお休みされていますが、なにか心境の変化はあったのでしょうか?

1人目のときは、早く仕事に復帰しないとクライアントがいなくなってしまうのでは、という心配がありました。しかし2人目のときは、クライアントも複数いて、「仕事ができるようになったら声をかけて」とおっしゃっていたので、安心して仕事をセーブできました。また世の中でも、働きながら出産する人が増えてきていたことも、安心感につながりました。

10カ月間のお休みのあと復帰してからは、子ども2人が保育園に行っている間に仕事をしていました。しかし当時、夫は仕事で帰宅が夜遅く、私がワンオペで幼い子ども2人を見ていたので、とても大変でした。なるべく夜は仕事をしないように調整していましたが、そうもいかないときは、子どもを寝かしつけてから作業をしたりしていました。そうすると余裕がなくなって子育てにも支障がでてきてしまうんですよね。そういった経験から、育児を軽くとらえてはいけないと思い、苦渋の決断でしたが、仕事量を減らすために依頼をお断りするようになりました。

子どもが成長するにつれて、仕事にかけられる時間が多くなってきていますが、自分に無理がない程度の仕事量にしようと、最近も心がけています。

──フリーランスならではの仕事と育児、両立する上で一番大変だったことはなんでしょうか?

スケジュールと仕事量の調整です。たくさん依頼をいただいたからといって、すべて受けてしまうと、日々の生活が悲鳴を上げてしまって……(笑)。子どもたちが保育園へ行っている間に、なんとかここまで仕上げたいという焦りと、クオリティ的に自分が妥協できないという感情が交錯していました。例えば、今までは3案欲しいと言われたら、4、5案ほど用意できていました。そこを期待して依頼してくださっていると思うと、2案しか出せない自分は納得がいかなくって。期待に応えたいので、時間の調整とクオリティをどれだけあげていくかっていうところが一番苦労しましたね。今でも(笑)。

会社員なら妥協して良いというわけではないのですが、特にフリーランスは、そこにこだわってやっていかなければ、継続して依頼してもらうのが厳しいのではないかと思っています。

──プロフェッショナルですね! お子さんが生まれてから、仕事に対する向き合い方も変わりましたか?

以前の生活は仕事が中心でしたが、子どもが生まれてからは意識が変わりました。私、わりと子どもが一番っていうタイプではないんですけど、仕事が一番ではなくなっちゃったかもしれないですね。仕事で完璧を求めてしまうと、子どもにしわ寄せがいってしまうときがあったので。バランスをうまく取るために、良い意味で諦める部分が増えました。でも妥協したくないという気持ちもあったので、つらい時期もありました。こういった意識の変化がなければ、仕事第一人間まっしぐらだったと思います。

──現在はお子さんも大きくなられたと思いますが、仕事と家庭を両立するにあたって工夫していることはありますか?

今は大きくなったので特にないのですが、子どもが小さいころはできるだけ、頼れるものはなんでも頼ることにしていました。いまはコロナの影響で難しいかもしれないですけれど、母親にお願いしたり、保育園にいち早く入れたり。ベビーシッターを利用したり、行政のサービスにも頼ったりしました。自分ひとりで育てようとは思わないで、いろいろな人の助けを得てやっていかないと、仕事と家庭の両立はできないと思っています。そこにはまったく、後ろめたさを感じていませんでした。

【この記事は前後編です:後編はこちら】

※2022年1月に取材した内容を掲載しています。


【インタビュアー】しゅふクリ・ママクリ編集部
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