見出し画像

電通デジタルのシェア精神でみんながハッピーになる働き方【変わる企業 変わる働き方】

家庭と仕事の両立には不安がつきまとうものですが、今、多くの企業で育児や介護と仕事の両立を支えるための人事制度が用意されているのをご存じでしょうか。働く人一人ひとりのニーズをくみ取り、多様な働き方が選べるようになっていると聞くけれど、広告・マーケティング界では…?
第3回は、電通デジタルです。働くママが自ら立ち上がり、組織化し、働きやすい職場づくりをボトムアップ型で行う取り組みについて取材しました。


電通デジタルの取り組み

電通デジタルは、国内最大級の総合デジタルファームです。2023年4月現在の従業員数は約2500名。2016年7月に電通グループのデジタルマーケティング専門会社として設立以来、コンサルティング、技術開発、実装、運用などを一気通貫で提供し、デジタルマーケティング領域における高い専門性と統合力を発揮しています。

社員の平均年齢は33.5歳。デジタル分野だけあって、若い人が多い会社といえます。比較的新しい会社で、なおかつ社会からニーズのあるデジタルマーケティングの領域ともなると、仕事のやりがいは大きい一方で、家庭との両立はどうやって実現できるのか、気になりました。そこで取材をしてみると、少し意外な回答が…。

「当社は中途入社の社員が多いのですが、今は新卒入社の社員を育て、活躍できる土台をつくっていかなければいけない時期にあります。将来入社する人が、妊娠や出産などのライフステージを迎えた時に、きちんと支援できる会社にならなければ…と考えています」(小田さん)

「私は2016年に新卒で入社しましたが、自分は結婚をしたいし、子どもも持ちたいと思った時に、ずっとこの会社にいられるのか?と考えたタイミングがあって。設立されたばかりの会社だったので、前例がないし、情報が少なくて、無理なのかも…と思ってしまったこともありました。けれど、これから入社してくる人たちに、家庭と両立できなさそうだからとこの会社を諦めてほしくない。私自身は今、ママである自分も楽しいし、一社員としての自分もすごく楽しいので、もっと楽しい未来もあるよ、この会社もグロースしていくんだよっていうことを発信したいと思いました」(近藤さん)

電通デジタルでは2023年2月、育児をしながら自分らしく働ける会社を目指して、「DDファミラボ」が誕生。同社で働くママ社員4名が自ら立ち上がり、組織化。現場社員の生の声をすくいあげ、働きやすい環境や制度に反映させるためのボトムアップ型の取り組みが始まりました。

電通デジタル サステナビリティ推進部 三浦愛由美さん
電通デジタル クリエイティブ統括室 HR推進ユニット 小田晴香さん
電通デジタル クリエイティブ統括室 HR推進ユニット 近藤ゆいさん

「DDファミラボ」誕生のきっかけ

「DDファミラボ」は、部門横断の組織です。現在のメンバーは15名、女性10名、男性5名で構成されています。主な取り組みは、ハンドブックの作成やメンタリング、Slackのチャンネル運営など。その活動は全社に展開しており、社員であれば誰でも利用可能です。

ネーミングの「DD」は電通デジタル、「ファミラボ」は「ファミリー+未来+ラボ」の略で、パパママに限定せずに、パートナーや同性同士のパートナー、さらには社員の家族も含めて、ファミリー全体を支援するという思いが込められています。

もちろん、電通デジタルにはフレキシブルな働き方を支える制度や休暇制度、出産・育児のための制度などが用意されています。産休・育休を始め、フレックスタイム制度やリモートワーク制度、育児時短勤務の場合は4種類のコースから選べるといった形で復職後は複数の働き方が選択でき、他と比較して制度の充実度も遜色ないところです。しかし、制度があれば万事うまく行く…というわけではありません。

「私は当時、今も所属しているクリエイティブ領域でプランナーとして働いていたのですが、部門内で初めて育休・産休を取得することになりました。その時に、会社として基本的な制度は用意されているものの、実際に妊娠が判明したら誰にどこから伝えればよいのか、つわりや体調不良の時はどこに相談したらよいのか、復職した後はどういう働き方ができるのか…。そういったところがわからず、課題を感じたのが、活動を始めるきっかけでした。私の育休復帰直後から、同じ部門内で妊娠されて産休・育休を取る女性が増え始めたこともあって、私が困ったところをきちんと整理して手を打っておけば、皆さんの不安がなくなるのではないかと考えました」(近藤さん)

クリエイティブの部門内に、パパママ社員の困りごとを解消する「ベビーキッズサポートセンター」を立ち上げたのが、「DDファミラボ」設立のきっかけになりました。

一方で、同じく創立メンバーの三浦さんは、以前所属していた総務部で、男性育休の対象者向けインタビューを実施した際に聞いた声がきっかけで、男性育休のガイドブックをつくりたいと思っていたところでした。

「インタビュアーとしていろいろな人に話を伺ったのですが、その際に、育休を取得してもどのような生活をしたらよいのかわからない、全然イメージがわかないからそもそも取得したいとも思わなかった、といった声を聞きました。もともと総務部では『パパママSlackチャンネル』を運営しており、そこで協力を呼び掛けて、メンバーが集まり、ファミラボがつくられたという経緯があります」(三浦さん)

入社して間もない人同士が、必要なときに必要な情報を持つ人とつながるというのは、なかなか難しいこと。ましてや、妊娠や出産といったデリケートな話題となると、相談し合える関係性をつくるのにはとても時間がかかります。会社の組織であれば、つながりや知り合いの人数にかかわらず誰でも気軽に参加できます。でも、そこまでやるのは、かなり労力がいるのでは?

「こういうのをやってみたい、こういう会社にしていきたいと声を上げると、やってみればと言ってもらえる風通しの良さが、電通デジタルの良さだと実感しています。私の所属するクリエイティブ統括室では、実際にやってよかったものは自分だけのものにするのではなく、領域全体はもちろん、全社にも広げていきたいと常に考えています。クリエイターの技術も、今まではクリエイター個人のものという意識が強かったけれど、そこを今あえて開放していて、みんなで共有することで組織としてアップデートしていく方針があります。そこはシェア精神というか、みんなでハッピーになろう、と」(近藤さん)

「私はずっとパパママの支援や働きやすい環境づくりで何かできないか考えてきたところだったので、一緒にやってくれるメンバーはいませんかと声を上げてよかったです」(三浦さん)

近藤さんが一人で活動していたところに、同じ部署に中途採用で、子育てをしながら働く小田さんが入社して活動に加わり、そして別にパパママの働きやすい環境づくりが何かできないかと考えていた三浦さんと合流。

「同じことを思っている人同士が集まって少しずつでも変えていけば、必ず良い方向に向かうと信じています」(小田さん)

ひと昔前とは違い、今は家庭も育児も両立するパパママ社員が増えています。もう、諦める時代ではなくなってきているのですね。

大切なのは、社員の生の声をくみ取り生かすこと

DDファミラボの活動は、2週間に1回のミーティングで、各施策における進捗共有はもちろん、現場における課題感を把握し、それに対してどんな打ち手ができるのか、意見交換を交えながら、企画立案することをメインとしています。

「電通デジタルで多様な人材が自分らしく働きやすくなるために…という点も大切にしているので、特定の家族や自分の経験値だけでなく、組織が強くなるために必要なことを考えています」(三浦さん)

「文化や風土をつくることは、トップダウンではできないと思うので、ボトムアップ型は必ず守っていきたいと思っています。そして、きちんと社員のインサイトを突いたアイデアが文化として根づくと思うので、社員が声を出していないことや表に出せない部分をきちんとくみ取って、言語化してアイデアにすることを意識しています」(近藤さん)

そのために、ママ社員に限らず、若手社員や部門長などいろいろな人と話し、意見を聞き、視点を集めることで、組織としてどうすれば働きやすく成長しやすい状態にもっていけるのかアイデアを出しています。

加えて、悩みを持つ一人ひとりの声に直接応えていくことも大切にしたいといいます。

「私は転職を経験していて、電通デジタルが3社目。第一子を出産した時は別の会社でした。電通デジタルに入って半年で第二子を出産しましたが、他社のことも知っているし、私自身が少しずつ今までの経験を語れるようになってきています。なかなか当事者以外には言いにくいことも多いと思うので、相談したいけどできないという人や話す機会がないという人の悩みにメンターとして個別に対応するということも、大切にしています」(小田さん)

社員の不安解消のために、ハンドブックをつくったり、情報交換の場を設けたり…。会社の成長という視点をもって活動しているのはそれだけでもすごいことです。社員の生の声をしっかり集めて、そこから形にした施策はどれも想像を超えた内容でした。

◆ハンドブック

仕事と家庭を両立するために必要な情報をわかりやすくまとめたガイドブックを社内のイントラで公開。2023年8月現在、2冊をリリースしています。秋冬の発行に向けて、育児と仕事の両立をテーマにした第3弾も企画進行中です。

【1】Welcome Baby Book(全51ページ、画像は一部抜粋)

「Welcome Baby Book」は、同社で初めて妊娠・出産する人を対象に、制度紹介だけでなく、休業制度利用中の過ごし方や、現役社員の生きた声を交えて不安に寄り添い、復職までの情報をサポートしています。会社によって利用できる制度やサポートが違うので、これは中途入社の方にも心強いですね。

【2】パパ育休虎の巻(全33ページ、画像は一部抜粋)

「パパ育休虎の巻」では、これから育児休業を取得する男性社員とその家族を対象に、先輩社員の体験談やアンケートの結果などを紹介。取得時期・期間や、家事・育児分担などを家族と話し合うためのサポートツールも提供しています。

◆Slack、メンター制度

「パパママSlackチャンネル」は2018年につくられ、現在の登録者数は300人を超えています。この1年は、パパママが気軽に情報交換ができ、悩みを打ち明けられる環境にすることを意識して運営。先輩パパママに匿名で相談できるため、現役で子育てをしている社員だけでなく、将来について考えている社員たちの情報収集にも利用されています。

また、個別相談をしたい人向けに、DDファミラボメンターも活動中。個人プロフィール欄には「#育休を経てジョブチェンジ」「#不妊治療」といった具体的なトピックも記載されており、個別の悩みの経験者に相談できます。

◆パパママ座談会、社員向けセミナー、交流会

オンラインでテーマに沿った座談会や情報交換を定期的に行ったり、リアルに親子で集まるイベントを開催したり。初対面の人でも交流が持てるように、いろいろな場づくりをしているのだそう。

Slack上でのリアルイベントの開催報告

「DDファミラボ」の誕生からおよそ半年が経過した現時点での反響は、「悩んでいるのは私だけじゃない」「同じ会社の人も協力してくれる仲間だとわかって嬉しくなった」など、パパママ社員が悩みを共有して一緒に助け合う姿勢に、共感が寄せられているそうです。

また今後は、同じ部署に子育てをしている社員がいない社員への呼び掛け・サポートや、中長期的には若手社員が「DDファミラボ」をどのように活用できたかというフィードバックを得ながら次に生かしていきたいということ。加えて、近い未来には介護をテーマにするなど、違うカテゴリーの課題への挑戦も忘れていません。

「シェア精神でみんながハッピーになる」とは、とても素敵な考え方ですね。ありがとうございました。


【インタビュアー】シキノハナ

編集者・ライター 兼 華道家。東京都出身。ビジネス雑誌の編集長を経て、複合サービス企業へ転職。約16年間にわたり、広報を軸とした企画業務に携わる。現在はシキノハナを主宰。仕事に、家事に、育児に…と、忙しい女性を心からリスペクトし応援する。
<ホームページ> https://shikinohana.com/

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

時短勤務、週4日以下の勤務など、柔軟な働き方ができるマーケティング・クリエイティブの求人情報を毎日更新中!