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博報堂プロダクツの「生涯現役のプロ」を実現させる働き方【変わる企業 変わる働き方】

家庭と仕事の両立には不安がつきまとうものですが、今、多くの企業で育児や介護と仕事の両立を支えるための人事制度が用意されているのをご存じでしょうか。働く人一人ひとりのニーズをくみ取り、多様な働き方が選べるようになっていると聞くけれど、広告・マーケティング界では…?
そこで、気になる企業の人事担当の方に、働くママを支援する取り組みについて取材しました。第1回は、博報堂プロダクツです。

博報堂プロダクツの取り組み

博報堂プロダクツは、博報堂グループのプロモーションやアクティベーション領域を担う総合制作事業会社です。広告写真や映像をはじめとするクリエイティブ、イベント・スペースやデジタルなどのプロモーション、カスタマーリレーションやグラフィックデザインなど12の事業本部と3つの支社があり、社員数は2102名(2023年4月現在)。企画立案から制作物の仕上げまで、一連の制作実務をワンストップで提供できる体制で、社内には制作のプロフェッショナルたちが多く在籍しています。

広告制作のプロというからには、さぞかし忙しくて、育児と仕事の両立なんて難しそう。そう思ってしまうところですが、人事室労務部の山本和生さんのお話は、少し意外なものでした。

「今、当社には88職種ありますが、例えばグラフィックのデザイナーは特に女性比率が高いですし、会社全体の男女比率もおよそ6対4になります。生涯現役のプロを目指そうというような理念を社として掲げていますので、育児支援に特化した制度設計というわけではありませんが、それを達成するために、子育てでキャリアを断念したり辞めたりしないように、制度や環境を整えています」

博報堂プロダクツ 人事室労務部 マネジメントプランニングディレクター 山本和生さん

社内のポータルサイトでわかりやすく情報発信

そもそも産休・育休制度は、それぞれ労働基準法、育児・介護休業法で定められていて、条件を満たせば誰でも取得できるもの。とはいえ、法改正や会社独自の休暇制度などもあり、社員であっても出産・育児に伴う制度をしっかり理解するのは大変なことです。

社員に向けた周知や情報発信をオンラインで行っている会社は少なくないかもしれませんが、同社では、イラストや図などを用いて、とてもわかりやすい紹介ページを社員向けポータルサイト上に設けています。

イントラネット上で公開している妊娠・出産を控えた社員向けのページ

「まずは、読みたくなるページにしたいと思いました」。担当の山本さんが配属されて最初に思ったことは、既存ページの表現が少し硬くて、わかりにくいということ。

「ちょうど自分も子どもが生まれたタイミングだったこともあって、奥さんを見ていると、想像以上に忙しい。働くママさんは本当にすごいなと思っています。時短で帰宅しても、全然休まずにノンストップで寝かしつけまでしている。そんな中で読むものだから、わかりやすく、でも情報は全部入れ込みたいと思いました」

色分けやフロー図により、産前・産後・育休・復職の一連の流れが視覚的に把握できて、人事制度は難しいという固定観念をいい意味でくつがえしてくれます。これなら出産前の不安も、少し和らぎそう。

2021年に第1弾、2022年に第2弾と、掲載コンテンツを拡充し、男性向けの情報やお金に関するページ、FAQページが追加されました。

制作には、かつて同社で営業として働いていた経験が活きたそう

週休3日制や100%在宅勤務制など働き方の選択肢を用意

働き方や休暇の制度は会社によって異なりますが、同社には、「限定勤務制度」という週休3日制や、「非出社型在宅勤務制度」という100%在宅勤務制が、コロナ禍以前からあるそうです。それぞれがプロとして働く職場だからこそ、その成果を高め、個人の能力を最大限に発揮できるように制度や環境が用意されているということ。しかし、制度はあっても実際に利用するのは難しいのでは…? そんな素朴な疑問を山本さんにぶつけてみました。

「ちょうどこの7月にも、育児を理由に週休3日制を利用し始める社員がいるのですが、上長には、背景をしっかりと本人から聞いてもらうとともに、週休3日ということは、実働4日間でできる業務量を付与するよう調整してくださいと、人事からも伝えています。そうでなければ、次が続かなくなってしまいますから。制度の目的や意義をしっかり説明すれば、理解してくれる人ばかりです」

週休3日になっても、基本的に業務量が変わらなければ1日の業務負担が増すだけですが、こうやって人事担当者もサポートしてくれるとは心強い。しかも、チームリーダー、部長、本部長と、各階層の管理職に正しい使われ方になるように話をしているそうです。

e-ラーニングや個別説明会で周囲の理解を促す

制度を利用する本人だけでなく、周囲の理解を促す取り組みは他にもあるといいます。例えば、e-ラーニング。毎月決められたテーマに基づき行われるオンライン研修で、2022年度は2回、「育児」をテーマに実施。制度の周知にとどまらず、管理職のサポートの在り方やチームビルディングについても、全社員向けに行う内容の中に意図的に入れ込んだというのです。研修後に実施しているアンケートの自由記述欄には、非常に多くのコメントが寄せられたそう。直近のe-ラーニングには、次のようなコメントが寄せられました。

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最近育休から復帰される・育休に入られる男性がいたので、このタイミングで受講できて良かったです。女性だけではなく男性も育児のために休むことができる制度が充実していることを知ることができました。ありがとうございました。
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育休制度の整った会社の労務環境で安心しました。パパ育休の取得可能期間や分けて取れることなどもとても勉強になりました。
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自分の子どもが生まれた時に、育休をとっておけば良かったなあと感じます。
後輩には育休はじめ、制度の利用によるより良い働き方を、折々のライフステージイベントに際して助言していきたい、制度を利用しやすい雰囲気を積極的に作っていきたい、と考え行動しようと思いました。
こういった事が、同僚たちの幸福度や働くモチベーションに繋がっていく事は、疑いようもありません。身をもって感じています。
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仕組みが理解できてよかったという声は、近々取得予定の人だけでなく、周りの人や男性社員からも多く聞かれたようです。理解のある環境づくりを、人事担当が進んでやってくれるなんて頼もしい。

また、要望があれば、部門ごとの説明会も開催。職種によって異なる働き方だからこそ、その働き方に即したきめ細かいサポートを行っている状況が伝わってきます。

社員目線で理解を促す仕組みづくりを進めたい

さまざまな取り組みが行われている中ですが、更に今後の取り組みについて、山本さんに聞いてみました。

「社員目線の施策は、もっとやっていきたいと思っています。新たな取り組みも、既存の制度の理解促進も、まだまだ着手できていないことがあります。また、制度を利用するための申請まわりも改善したいですね。働きながら、育児しながらだと地味に大変な申請も多々ありますので、そういった小さなストレスの原因も改善していきたいと思います」

今回、山本さんからお話を聞いて感じたのは、プロフェッショナルな人材が集まる職場だからこそ、その能力を最大限発揮できるように最適な環境を会社も考えてくれているのだということ。そして、女性だけでなく男性にとっても育児が身近になってきたからこそ、働くママをサポートする仕組みが会社で整備され始めているということです。安心しました!


【インタビュアー】シキノハナ

編集者・ライター 兼 華道家。東京都出身。ビジネス雑誌の編集長を経て、複合サービス企業へ転職。約16年間にわたり、広報を軸とした企画業務に携わる。現在はシキノハナを主宰。仕事に、家事に、育児に…と、忙しい女性を心からリスペクトし応援する。
<ホームページ>https://shikinohana.com/

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