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アドウェイズの「愛社員精神」をベースにした働き方【変わる企業 変わる働き方】

家庭と仕事の両立には不安がつきまとうものですが、今、多くの企業で育児や介護と仕事の両立を支えるための人事制度が用意されているのをご存じでしょうか。働く人一人ひとりのニーズをくみ取り、多様な働き方が選べるようになっていると聞くけれど、実際は…? 第6回は、インターネット広告会社のアドウェイズです。会社から社員へ愛を伝え、家族との接点も増やすことで、社員の定着を図る取り組みについて取材しました。


アドウェイズの取り組み

アドウェイズは、デジタルマーケティングに関連する広告代理店事業やアフィリエイト広告事業、ソリューションの開発・メディア運営事業などを手がける広告会社です。2001年に設立され、現在はアジアを中心に世界各国にも事業を展開。従業員数は1153名(2023年12月末現在)で、男女比率は男性64%、女性36%。2024年4月現在で、産休・育休制度を利用しているママ社員は20名強、パパ育休も社内周知を行うなどして取得者が増加傾向にあります。

今回は、一風変わった面白い福利厚生の取り組みをしている広告会社があると聞いて、取材にお邪魔しました。広告会社は、話題づくりがうまくて、面白いことを考えるプロ集団です。でも、福利厚生は一過性の取り組みだったり、実際には利用しづらかったりしませんか。そう思いながら伺った人事推進室の山本純さんと黒木理沙さんのお話は、少し意外なものでした。

「これは2014年の話にさかのぼるのですが。当社の経営陣が、どうしたら社員に愛社精神を持ってもらえるのかを検討したんです。その際に、『いや、経営側が社員に愛社精神を持てと言う前に、そもそも私たちがきちんと社員のことを考えられているのだろうか』という点に立ち返ったのが、今の福利厚生の取り組みの発端でした。そして、会社が社員に対してしっかり愛を伝えていくのが大事ということで、『愛社員課』という部署が生まれました。『健康を守る』『家族を大事にする』『仲間意識を強く持つ』をテーマに掲げ、それを実現するための制度やイベントなどを企画・運営しています」(山本さん)

「今では社員は、キャリアとライフステージを両立することができて、幅広い選択肢から自分自身の人生を考えることができる会社になっています」(黒木さん)

2014年の開始から10年、「愛社員課」は人事推進室の方々が主導し、他事業部の方々の協力を得ながら現在まで取り組みは続いているそうです。それでは具体的に、どのような取り組みをしているのか、見ていきましょう。

アドウェイズ 人事・経営推進グループ 人事推進室 人事企画Unit ユニットマネージャ 山本純さん
アドウェイズ 人事・経営推進グループ 人事推進室 人事企画Unit HR Staff 黒木理沙さん

役員も社員も子ども?「ADWAYS Baby」

アドウェイズベイビーのWebサイト

まず初めに興味を引いたのが、アドウェイズグループ社員の子どもたちを中心に構成された「株式会社ADWAYS Baby(アドウェイズベイビー)」。社員とその家族が求めている就業環境の提供を目指して活動する会社です。

具体的には、年に1度開催される「ファミリーデー」で、社員と配偶者・パートナーやお子さまを招いて、職場見学や意見交換会などを実施。その時に、「子ども役員会」を設けて、どのような働き方だったら仕事と家庭を両立できるかについて、会長や社長との意見交換を実施。それらが、制度設計などに活かされていきます。ファミリーデーは2014年8月から開催しており、2023年は80名のアドウェイズグループ社員および社員のご家族の方々が参加したそうです。

でも、社長の前で率直に意見って、言えるものでしょうか。査定に響きませんか? そんな心配もありそうですが、同社は普段から経営層に対しても「さん」付けで呼ぶなどフラットな社風で、この場でさまざまな意見が出ているということです。

「ファミリーデーは、ご家族に直接ヒアリングを行う機会というだけなく、社内スタンプラリーを行ったり、当社はITを使った広告事業もやっているので、ITを使ったコンテンツを体験してもらったり、ご家族が職場見学をする機会でもあります。昨年は『海』をテーマにしたAR体験で、お子さんが自分で描いた絵をスマホで撮影すると、空間にそれが投影されるといった企画を行いました。ご家族に、実際の職場を見ていただいた方が、朝、安心して社員を送り出していただけるのではないかと思います」(山本さん)

2023年のファミリーデーの様子
2023年のファミリーデーの様子
2023年のファミリーデーの様子

参加した家族同士が仲良くなったり、先輩ママが後輩ママに自身の経験を共有したり、パートナー同士がつながったりする場にもなっています。お子さんたちにはAR体験などを通して、わくわくドキドキを体験してもらうことで、「パパやママの会社ってすごいね!」と、アドウェイズの魅力も感じてもらっているそうです。中には「僕も将来アドウェイズに入りたい」といった声も出ているとのこと。

複合的に組み合わせてカスタマイズ可能な人事制度「MyWAYS」

アドウェイズには、一人ひとりに合った働き方をサポートする独自の制度「MyWAYS(マイウェイズ)」があります。時短勤務や在宅勤務、フレックスタイムなど複数の制度を組み合わせてカスタマイズできるのが特徴です。例えば、通常はコアタイムありのフレックスタイム制ですが、コアタイム自体を短縮するといった柔軟な対応も可能なんだとか。これは社員の家族との意見交換を通じて形になった制度だそうです。

「制度を一律で決めておけば運営側としては楽ですが、社員がよりパフォーマンスを発揮しやすい働き方ができるように、制度の集合体にして、汎用性を持たせています」(山本さん)

社員同士の距離が近い風通しの良い社風という同社。上司に気軽に相談できるだけでなく、制度としてもきちんとサポートされているというのは、相談を受ける上司にとってもありがたいですね。また、人事推進室では、社内チャットで情報発信をするとともに、「教えて人事制度」というチャンネルを用意することで、他人に知られない形で相談を可能に。こうした取り組みにより、現在12名の方が育児などを理由に「MyWAYS」を利用しているそうです。こういう制度の話は、あまりオープンに語られることもないため、いざ自分が相談しようと思ってもどこに相談してよいのかわからないことがありますが、相談窓口が明確で、さらに秘匿性もきちんと確保されているので、相談しやすい環境ですね。

家族の誕生日に届く会社からのプレゼント「HAPPY RICE-DAY」


「HAPPY RICE-DAY」で実際にプレゼントをもらったお子さんの様子

そして、特にユニークな取り組みのひとつが、その名も「HAPPY RICE-DAY(ハッピーライスデー)」。2014年5月から続く取り組みで、社員の家族の誕生日に、5キログラムのお米とメッセージが届きます。毎月、社員からのエントリーを受け付けており、お米は無洗米や玄米などから選べるのだそう。ちなみに、社員の同性パートナーや事実婚のパートナーもエントリーOKです。

「社員の健康を支えていただいているご家族への感謝の気持ちで、送っています」(山本さん)

誕生日に家族が勤める会社からお米が送られてきたら、びっくりしますがとても嬉しいですよね! 会社が社員の家庭のことを考えてくれている…働きながらそんな実感を持つことはあまりないかもしれません。でも、このような形になって現物が届いたら、きっと会社と家庭の距離感はもっと近づくでしょう。お米というチョイスも絶妙で、食卓を囲む際にも、嬉しい気持ちを家族みんなで共有できますね。

家庭と会社の信頼関係を会社側から築く

2014年の「愛社員課」の発足以来、「家族」「健康」「仲間」をキーワードにさまざまな取り組みを行ってきた同社。「ADWAYS Baby」や「HAPPY RICE-DAY」は「家族」へ向けたものですが、「健康」の取り組みでいうと、2024年3月には、福利厚生に鍼灸治療の代金の一部が補助されるサービスが追加されました。また「仲間」でいえば、多種多彩なサークル活動があり、1人2つまで参加可能で、施設使用料や高速道路料金といった活動費の一部が補助されます。普段、業務で関わらない人とつながったり、社員間のコミュニケーションを強くしたりする目的だそう。

アドウェイズの経営理念は「人儲け」。会社の利益を上げるためではなく、社員が自ら挑戦したいと思える仕事や成長の機会になる仕事をしてもらうことで、家族にも自慢できるような社員に愛される会社となり、ひいては会社の成長につながることを意味しています。

今回、アドウェイズで、愛社精神ではなく愛社員精神を具現化した数々の取り組みを教えていただき、目からうろこが落ちる思いがしました。会社員をしていると、家庭よりも会社都合を優先しなくてはならないことが少なくありません。そんなときにも、家族も会社と接点を持ち、多少でも顔の見える関係でいれば、家族の受け止め方や理解は大きく変わるでしょう。仕事と家庭を両立していくためには、家族の理解は不可欠です。アドウェイズはまさに、家族が「安心して送り出せる会社」でした。


【インタビュアー】シキノハナ

編集者・ライター 兼 華道家。ビジネス雑誌の編集長を経て、複合サービス企業へ転職。約16年間にわたり、広報を軸とした企画業務に携わる。現在はシキノハナを主宰。仕事に、家事に、育児に…と、忙しい女性を心からリスペクトし応援する。
<ホームページ>https://shikinohana.com/

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