育休中の転職経験記。自分を大切にしながら、やりたいことは諦めない【ママ訪問】
育休中の転職活動、不安は行動によって解消された
──Yさんのこれまでのご経歴を伺います。
大学卒業後、初めての就職は10名規模のIT企業でした。そこではWebコンテンツの営業などを担当し、3年間在籍しました。その後、広告会社に転職し、こちらでは主にゲーム会社をクライアントとする営業職としてグローバルプロモーションに約2年間、携わっていました。
3社目では、ソフトウェア開発企業の広告事業部にアカウントマネージャーとして6年間勤めました。外資系企業でしたから、海外出張なども時折ありましたね。この会社に勤めているときに産休を取り、育休期間中に退職。転職活動をして、2022年11月に現職のメディアプラットフォーム、noteに入社しました。
現在はnoteの法人向けプランを利用いただいているお客さまへのサポート担当として、静岡からフルリモートで働いています。勤務時間はフレックス制で、フルタイム勤務です。
──育休中に転職活動をされたのですね。大変だったのではないでしょうか?
もともとは、3社目にそのまま復職をするつもりだったんです。その会社は当時、男性社員の比率が高く、育児をしながら働く女性社員は日本オフィスにはいませんでした。私がロールモデルになりたい、という気持ちもありましたが、育休・産休の取得や復帰について、会社側と話し合ううちに、いろいろと不安材料が見えてきてしまいました。
例えば、コロナ禍が落ち着いて、海外出張が復活しつつあったこと。出張に出ると、少なくとも1週間は留守をすることになります。また、アメリカやイギリスにいるメンバーとのミーティングが頻繁にあったので、時差に合わせて深夜・早朝の対応が必要になる場合もあり、勤務時間が不規則になりがちでした。
子どもが生まれる前は、何とかなるかなと思っていたのですが…。育児で体力を奪われる中、両立していくイメージがどうしてもできませんでした。会社からは、ポジションの変更や時短勤務を提案してもらいましたが、やりたいこととの折り合いがつかなかった、求められるパフォーマンスを出せるイメージがどうしても持てなかった、というのが正直なところで、産後8カ月頃になって、やはり復帰は難しいと決心しました。それでも、働き続けるために色々な道筋を一緒に考えてくれた前職の方々にはとても感謝しています。
働きたい気持ちは変わらず持ち続けていたので、転職活動をすることにしました。
──その後、どのような転職活動をされたのでしょう?
これまでの転職活動では、取引先や知人の誘いで転職を決めることが多かったのですが、今回は、初めて転職エージェントを利用しました。これまでのようにコネクションがない転職活動で、大変な点もありましたね。
──困難に感じられたのはどんなところでしょうか?
心理的な問題もありました。育休中の転職活動となってしまい、「これってどういう風に見られるんだろう」と案ずる気持ちがありました。前職に不義理を働くことになってしまったのではないか、時間を空けてから転職活動をするべきか…。結果として、転職活動において不利になることや、嫌な思いをすることはなかったのですが、当時はいろいろと悩みましたね。
──その不安は、どうやって乗り越えられたのですか?
そうですね、行動することによって解消されたと思います。やはり働きたいという気持ちが強かったんですよね。案ずるより産むが易しと思う性格なんです。
1つ心がけていたことを挙げるとすれば、モチベーションを保つために情報収集を徹底したこと、でしょうか。育児をしながら働くとなると、どうしても時間の制限があります。これまでは「結果を出すためには残業してでもやり切る」というタイプでしたので、それができなくなることで、自分には社会的な価値がないと思ってしまったり、自己肯定感が下がってしまったりする環境に身を置きたくなかったんです。
だから、転職先を選ぶにあたっては、業種や職種はもちろん、各企業の社会と社員に対するスタンスや、会社の風土にも着目していました。子育てをしながら働く社員への目配りがあるかどうか、などですね。転職エージェントにも、自分の状況を理解いただける職場とのマッチングを希望している旨を伝えていました。そのおかげで、ミスマッチがない状態で面接に臨むことができました。
──結果として、noteを選ばれた理由は何でしょうか?
ここで働きたい、と思う大きな決め手が3つありました。
1つは業務内容です。私の追求したい「クリエイター支援に携わる業務」であること。私は世の中にクリエイターが増えると世界はもっと楽しくなる、と思っているのですが、これを実現できる企業だと感じました。前職でもクリエイター支援の業務に携わっていましたので、引き続きそのビジネスに関わりたいというキャリアの軸が根底にありました。
もう1つは、企業理念です。当社のミッションは、「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」というもの。明確なステートメントを掲げながら事業に取り組んでいる姿勢が素晴らしいと感じました。ここにも共感を覚えました。
最後に、やはり「働く環境」です。子育て中の社員への理解が深いと感じました。フルリモート勤務が可能で、柔軟性のある働き方を率先して実施している企業、という印象は強かったですね。
「子どもがいるから」ではなく、「誰もが最適な働き方ができるよう配慮しよう」
──現在のお仕事について伺います。ある一日、をご紹介いただきたいです。
現在は、メディアプラットフォームであるnoteを利用している法人クリエイターのサクセス支援をしています。働き方は、正社員でフルタイム勤務、フレックスタイム制です。静岡在住で、フルリモートで働いています。
私には1歳半の息子がいます。これまで、勤務時間中は両親に預けていたのですが、今年の5月に待機児童保育園に入園しました。
保育園に送り出し、8時頃から業務を開始します。Slackでチームメンバーに勤務開始を報告し、スケジュールを共有します。8時から10時までは1人で作業をする時間です。10時から10時半までの間は毎日チームミーティングがあります。11時から16時がコアタイムで、お客さまとのミーティングが随時何件か入ります。終業は午後の5時頃ですね。
ときどき、息子の用事で途中退席することもあります。働くならフルタイムで働きたいと思っていましたので、フレックス勤務ができるのはありがたいですね。柔軟性がある勤務形態ですので、コアタイムを守りながらうまく働くことができています。
──現在の職場で、育児への理解についてはどのようにお感じですか?
在籍しているチームでは、約半数のメンバーに子どもがいます。上司も同じ境遇ですので、お互いの状況を理解し合えています。
ただ、どちらかというと、「子どもがいるから配慮しよう」ではなく、「誰もが最適な働き方ができるよう互いに配慮しよう」という雰囲気を感じます。育児中のメンバーはもちろん、通院や介護が必要だったり、業務委託で参加していて他社の仕事もしていたりするメンバーもいます。どんな理由であれ、それぞれの都合に合わせて皆でスケジュールを調整します。
子どもがいると、子どもの発熱で突然お休みしなければならないこともありますよね。そうすると、誰かにその分の負担をかけることが心苦しくなることもあると思います。それが、このチームでは感謝の気持ちだけでいい。風通しが良く、平等で、バランスもとれています。とても居心地が良いですね。
──育休と復職を経験されたわけですが、いま振り返って、一番大変だったことは何でしょうか?
すべてがゼロからのスタートになったこと、これが一番大変でしたね。1年ほど働いていなかったので、脳の使う場所が変わっていたというか…。さらに、私の場合は、復職と同時に、異業種・異職種で転職しました。最初はうまく切り替えができず、また覚えることもたくさんあり、目まぐるしい日々が続きました。産後だったせいか体力も消耗しやすく、そのうえ気力も必要で、以前に比べると仕事のスピードが出ない、という感覚に陥ることもありました。
──現在、お仕事とご家庭を両立する際に工夫されていることはありますか?
TODOリストを作成するようにしています。仕事のことも、家や子どものこともすべて書き出し、朝のうちに優先順位をつけて、高いものからこなしていきます。今日ここまではこなす、という最低ラインも事前に引いています。
リストをつくる上で、仕事の順番ややり方を効率よく組み立てることも大切かと思います。例えば、私はメールチェックの時間を1日3回ほど設定し、それ以外の時間はメールを見ないと決めて、資料作成やミーティング準備などの業務に集中できるようにしています。私の仕事の場合は、それで不都合がないんです。ただ、チームとの足並みを揃えることは強く意識しています。
──優先順位をつけるのは大切ですよね。
子どもが生まれてから、自分の努力ではどうにもならないことが増えました。それがストレスになる場合もあります。だから、仕事でも家事でも、自分の中で一定の基準を設け、自分がパンクしないようにすることも大切だと思うようになりました。
自分の定めた設定値をクリアしたら、その先へ行きすぎず、一度ストップするように努めています。初めはこういうスタイルを取ることに、とても勇気がいりました。大切なのは、この設定値を見誤らないこと。仕事においては、チームメンバーやお客さまからのフィードバックを大切にし、常に注意を払うようにしています。
自分も周りも気持ちよく、そして長く働き続けるために
──これからの展望をお聞きしたいです。
やはり、ずっと働き続けたいですね。私がキャリアの軸としているクリエイター支援というビジネスに、これからもずっと関わっていきたいと思っています。
noteというプラットフォームが、クリエイターとして一歩を踏み出そうとしている方々の気持ちを後押しする場所であり続け、そこで生まれたクリエイターが活動を継続できるよう、さらに活躍できるように支援をしていきたいです。
また、現在はフルリモートですが、もう少し子どもが大きくなったら、オフィスに出勤もできたらと思っています。今は家が仕事、家事、育児、とすべてが詰まっている場所になってしまっていて、なかなかリフレッシュも難しいのが実情です。時には気分転換も必要かなと感じます。出勤して、メンバーと顔を合わせて働く、というのもぜひ今後取り入れてみたいです。
──それでは最後になりますが、お仕事と家庭を両立しながら働いている方に向けて、メッセージをお願いします。
まずは「お仕事に子育てにお家のこと、毎日お疲れさまです!」と声を大にしてお伝えしたいです。
皆さん、置かれている状況や悩み、一人ひとり違うと思います。そのなかで、仕事に対して求めるものや、環境にもそれぞれ変化が起こるのは当然です。私自身がそれを経験して、そんな時でも自分自身に制限をつくらず、我慢しなくてもよいのではないか、と思うようになりました。やりたいことはトライすれば良いし、そのために必要な努力をする、これで良いのではないでしょうか。
子どもが生まれて実感しましたが、ママになると、自分の裁量ではコントロールできない領域がたくさん発生しますよね。それが働き方やキャリア形成に影響を及ぼすことも確かだと痛感します。そんな時でも、サポートしてくれる人が周りにたくさんいることに気が付きました。自分も周りもお互いに気持ちよく、そして長く働き続けるために、私も常日頃、周りへの感謝の気持ちを忘れないように、と心がけています。
これは私のケースに限るかもしれませんが、周りに育休中に転職した人もいなければ、仕事の環境を大きく変えた人も見当たりませんでした。話をすると驚かれることも多かったです。でも、当時の私自身としては今やりたければやってみれば良い、やるしかない、と思っていました。
自分を大切にしながら、やりたいことにはトライする、諦めずに進む、これを唱え続けることが私にはとても大切でした。皆さんの参考になればうれしいです。
──ありがとうございました。 これからも「しゅふクリ・ママクリ」では、ワーママを応援していきます。
※2023年5月に取材した内容を掲載しています。
【インタビュアー】しゅふクリ・ママクリ編集部
ママ訪問では、ママクリエイターにリアルな働き方やキャリア観についてインタビューしていきます。
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ママ訪問では、子育てと仕事を両立されているクリエイターの方々のお話を伺いたいと考えています。取材のご協力をいただける方は、お気軽にご連絡ください。
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