日本留学・就職を経て、グローバルな仕事と子育てを両立―ブリヂストン グローバル商品企画部 趙玲さん【輝く!ママクリ】
タイヤの奥深さと面接官の誠実さに惹かれて入社
――ご経歴について、簡単に教えてください。
趙:2014年にブリヂストンへ入社しました。最初は自動車メーカー向けにタイヤの商品企画を行う部署に配属されて、どの商品ブランドでメーカーへアプローチしていくかを車種ごとに検討する業務を担当しました。その後、農業用トラクターや鉱山車両用のタイヤの商品企画を担当したり、自社製品を購入したお客さま向けにタイヤのメンテナンスサービスなどを行うソリューション事業部に異動して、バス用タイヤのサブスク型ビジネスモデルなどを担当しました。2019年から産休・育休を取り、2020年に職場に復帰、その2カ月後に異動があり、現在の部署、グローバル商品企画部の所属となります。
――現在は、どんなお仕事をしていますか。
趙:グローバル商品企画部では、市場ごとに個別商品をつくるというよりかは、グローバル各拠点の取り組みを俯瞰してグローバル最適の視点でサポートしています。例えば、グローバル共通商品の企画や販売戦略を立案したり、グローバルにおける最適な商品体系を検討したりしています。その中でも私は、セダンやSUVといった一般の消費者向けの乗用車用タイヤの商品企画を担当しています。どういった商品がお客さまのニーズを満たしているのか、また競合他社の商品とどう差別化するかなどをグローバルのメンバーと一緒に検討・立案することが仕事です。
――日本に来るきっかけは何だったのでしょうか。
趙:もともと日本のアニメやドラマが好きで、日本留学に興味を持ちました。でも語学留学ではなく、日本語を勉強してから日本の大学に通えば、日本語を通して他の分野の授業も受けられるので、一石二鳥だと思ったんです。2008年に中国の高校を卒業して、日本で日本語学校に2年間通い、そのまま大学受験をしました。その後の大学時代も含め、生活環境や今まで出会ってきた人たちが良かったので、社会人生活も経験してみたいと思い、そのまま日本で就職することを決めました。
――ブリヂストンに入社した理由を教えてください。
趙:大学は商学部でマーケティングのゼミに入っていたこともあり、モノづくりに興味がありました。また、グローバルで展開する企業で働きたいと考えていました。
就職活動では食品や飲料メーカーを中心に応募していましたが、合同説明会で偶然ブリヂストンの会社説明を聞いて、タイヤの奥深い魅力に惹かれました。私自身、自分が目立ちたいというよりも、どちらかというと後ろで支えたいタイプです。大きく派手な車体と比べるとタイヤは地味ですが、重要なところで皆さんの生活を支えている点にも好感が持てました。
また、海外市場も経験してみたかったので、日本に本社を置くグローバル企業という点にも惹かれました。さらにブリヂストンは面接官の人柄がとても良く、選考の際にどういう仕事をやりたいのかを誠実に聞いてくれたんです。企業や商品だけでなく、人にも大きな魅力を感じ、最終的にご縁があって入社できました。
海外とのやりとりが良い刺激に
――ご出産はいつごろですか。職場復帰の際の心境はどうでしたか。
趙:2019年6月に産休に入り、7月に出産しました。当初は2020年4月に復帰予定でしたがコロナ禍に入ったこともあり、少し育休を延長して2020年7月に復帰しました。復帰の際は正直、仕事再開が楽しみな一方で、育児との両立の不安が半々くらいでした。
出産は初めてでした。コロナ禍でなかなか外出ができず、言葉も話せない子どもと一緒にいると、誰とも会話しないで1日が終わってしまって。気持ち的にきついときもありました。家で育児や家事をするだけでなく、場を広げてもっといろいろな人と話をしたい気持ちがあり、仕事の再開が楽しみになっていったんです。
その一方で、先輩ママたちや同僚の話から、保育園を急に休まなくてはならないこと、コロナ禍もあり、リモートワークをはじめ働き方が変わることを聞いていました。産休前とは大きく変わりそうな環境に、慣れるまでどれくらい時間がかかるのかという不安もありました。
――復帰時は、以前の仕事にそのまま戻った形でしょうか。
趙:育休中に、自分の所属していたソリューション事業部はグループ会社に統合されました。そのため復職時は、部署は同じだったものの、会社自体が異なり、周囲の雰囲気も以前とは大きく変わっていました。
ただ上司や同僚は産休前から変わらず、「出産がんばってね会」なども開いてくれましたし、復帰の際も「おかえり」と温かく迎えてくれました。仕事上でも私の状況を考慮してくれて、スピードが求められる案件よりも、長期スパンでスケジュールを調整しやすい案件を担当させてくれたり、お客さまへの訪問や出張のスケジュールもなるべく私の都合を優先してくれたりしました。
――復帰の際の会社のサポートでよかったと感じたのは、どんなことですか。
趙:いくつかあります。復帰後は時短勤務を快諾してもらい、子どもの送り迎えなどの時間をやりくりできるようになった点がありがたかったです。
さらに、復帰の2カ月後に現在のグローバル商品企画部へ異動したことで、出社から在宅勤務がメインに変わりました。以前の部署とは異なり、社外のお客さまはほとんどいないためです。そのおかげで、時短ではなくフルタイムに戻ることもでき、金銭的な不安が和らぎました。
それと、とても助かっているのがベビーシッターの助成金制度です。1人当たりの年間上限額はありますが、実費を会社が助成してくれます。私も夫も両親が中国に住んでいて頼れる人が身近にいないので、どうしても必要な場合にはベビーシッターや病児保育を頼んだりしています。助成金制度のおかげで割と気軽に頼めましたし、非常にありがたいです。子どもの性格にもよると思いますが、やはりプロのシッターは子どもをあやすのが上手で、うちは毎回楽しくやっています。「何時に何をやった」という報告書も細かく書いてくれるサービスで、安心して利用できます。
――ご家庭での家事分担は、どのようにしていますか。
趙:家事分担のルールは明確には決めていないのですが、夫にもできるだけ担当してもらっています。例えば子どもの送迎は、私が送ったら夫がお迎えに行くとか。床掃除や寝かしつけ、洗濯は私がやり、夫は食器洗いや子どものお風呂をやってくれています。
夫は自営業で行政書士事務所を経営しています。夜間のお問い合わせ対応だったり、土日に外出して商談したりと不在にすることが結構あり、その際は私がワンオペになります。ただ、私もグローバルな市場を相手にしているため、海外にいるメンバーとは時差の都合で夜21時から会議が始まることも。その都度、夫婦で話し合いをしながら、どちらがやるかを決めています。
――時差のある海外とのやりとりや出張といったお仕事は、大変ではありませんか。
趙:もともとグローバルな仕事がやりたくて入ったので、問題ありません。現在は裁量労働で、勤務時間は自分の裁量で決められます。そのため、子どもの世話で一時的に抜けて、夜に再開するなどしています。日本の夜は、海外だとちょうど勤務時間になりますので、ヨーロッパやアメリカなどの海外のグループ会社の人と直接やりとりできて、グローバルで足並みをそろえて全社目標に向かえるのが楽しいです。
タイヤってどれも黒くて同じように見えるんですけど、グレードやブランドや中身を見ると、商品によって全然違います。国ごとに環境も異なるため、異なる課題が生まれます。それを共有することで、よりよい商品開発へとつながります。そして自動車という乗り物の一部として、国境を越えていろいろなエリアに移動するので、販売エリア外の市場の情報まで共有して、お客さまへのアフターサポートを検討することも重要な議題です。
また、海外出張に行く機会もあります。出張中は子どもが心配ですし、夫の仕事の状況もあるので、早めに日程を共有して夫婦で出張期間中の計画を立てます。ベビーシッターや家事代行を事前に予約したり、夫に仕事のスケジュールを調整してもらったり。出張準備は大変ですが、行ったら行ったで楽しいです。昨年はアメリカに1週間行きました。やっぱり違う土地に行ったり、違うバックグラウンドの人と話したりすると、自分では気づかない視点やわからない知識がいろいろ入ってくるので、良い刺激になっています。
【この記事は前後編です:後編は11/14公開予定「『努力は必ず報われる』を自分の仕事で息子に見せたい」】
【執筆者プロフィール】シキノハナ