働き続けてママに~デザイナーへの歩みといま(後編)【ママ訪問】
いまの私の仕事について
──現在のお仕事内容・働き方について教えてください。
デザイナーの補佐をしています。社員デザイナーの指示のもと、デザインを起こしていくのですが、アシスタントといえどもデザイン力が求められる仕事です。具体的には食品のパッケージデザインを多く手がけています。お菓子のパッケージなどもあり、娘と一緒に買い物に出かけると、「ママがデザインしたの」と教えてくれます(笑)。
私は以前の派遣で経験したパッケージ分解の知識があったので、役立ちました。パッケージは特殊な分野なので、理解があることが強みだったのかもしれません。最近では陳列イメージを重視する会社も多いので3Dソフトが使えることも重宝されます。3Dソフトが人より詳しいこともあり、依頼される案件も多いですね。
デザイン以外の業務では、部門の全体ミーティングやデザインの方向性を確認する打ち合わせに参加することもありますが、基本的にはデザインにかける時間がほとんどです。長い時間、デザイン業務を行っていますが、自分にはとても合っていると感じています。集中して仕事させてもらえる環境が大変ありがたいです。
──現在の働き方を教えてください。
コロナ禍になる以前は、週5日の出勤で、9時から17時までの時短勤務でした。緊急事態宣言および、まん延防止等重点措置の期間は在宅勤務となりました。通算するとこれまでおよそ1年間、在宅勤務していたことになります。パソコンは会社から支給いただいたので、社内にいるときと同じ環境でとても助かりました。ただ、リモートなので実際にプリント出力して確認作業ができないこと、それだけが難点でしたね。
──在宅勤務で感じたメリット・デメリットはありますか?
メリットだけと言ってよいほど、メリットしかありませんね(笑)。仕事に集中できること、これが最も大きいです。仕事の開始や終了時刻も自分の裁量で決定して、時間を自分の好きなように使えます。たとえ時間外であっても作業のキリのいいところまで思い切り仕事ができるんです。私の性格上ですが、途中で終わらせることが気持ち悪いので、いまの状態はストレスが少なくて快適です。
通勤時間がないのもよいところです。出勤しているころは退勤時間が迫るとそわそわしてしまい、時計が気になってしまって……。残業も難しいし、作業の途中で帰るのはすっきりしない。子どもはいま小学2年生になりましたが、朝の出勤時は早く家を出なくてはならなくて、校門が開くかどうかというかなり早い時間に娘を学校に行かせていたので、気になる点もありました。在宅になってからは家で登校を見送ったり、下校時も余裕をもってお迎えに行ったりすることもできるようになりました。朝、見送りができるって素晴らしいことですね(笑)。
ほかには、いままで必死に時短でしていた料理にも、時間をかけられるようになりました。在宅勤務のおかげで仕事も家事もコントロールしながら、うまく生活が回っています。 デメリットはほとんど感じませんね。強いて言えば以前と違って外出しなくなったので、平日こなしていた雑務を週末にこなすことになった程度でしょうか。
家庭と仕事の両立~私の工夫
──お子さんが生まれて仕事に対する向き合い方の変化はありましたか?
やはり子どもが小さいうちは、予定外の早退や急なお休みが増えてしまいました。それを補うための残業もできなかったので、ご迷惑をかけることになって……。職場の理解なくしては乗り切れないと実感します。勤務先を選ぶ際にも、そのあたりを理解してくださるところを希望するようになりました。
仕事のやり方では効率化を念頭に置いて、とにかく無駄を省く工夫を凝らしています。例えば、商品一覧がない場合にはExcelで表を作成し、調べたいものがすぐに見つかるように整えました。ほかには、二度手間をなくしてつくり直しをしないためにもアイデアの候補をあらかじめ準備するようにしました。イメージと近い画像をいくつか準備しておいて、ピックアップしてもらうようにしています。
あとは、コミュニケーションですね。わからないところ、不明瞭な部分は積極的に質問するよう心掛けています。イメージの齟齬が生まれないよう、自分が納得いくまで聞くようにしています。
──ご家庭でなにか工夫していることはありますか?
働いている限り、家事についてのストレスは続くと思っています。ですので、役割分担をして家族で協力し合っています。特に夫の協力なくしては成り立たないですね。洗濯は主人がしてくれるので、すべてお任せしています。娘のお迎えも時間の許すときはお願いしています。最近では娘もお手伝いをしてくれて、なかなかの戦力になってきました。食事に関しても美味しくてすぐつくれるレシピや食材の利用に目がいきますね。
仕事をずっと続けてきたから、デザイナーの私がある
──キャリアにおいて転機はありましたか?
転機は、出産後にデザイナー業務も派遣で募集が増えていると気づいたときです。オペレーターをしていたころ、デザイナーの募集はほとんど見つからなかったのですが、時代に合わせてデザイナー自身も派遣会社も、お互いにニーズが出てきたのだと思いました。出産後に自分のこれまでの仕事と世の中の流れが合致して、デザイナーとしてシフトできたことは大きな転機でした。
考えてみると、これまでずっと働き続けてきたのですが、もともとは子どもが生まれたら家にいたいと思うタイプでした。ところが、保育園も学童も一度やめてしまうと、また入り直すのは難しいことを知りました。それに加えて職歴にブランクがあるのも書類審査に不利ですし、パソコンの機能はどんどんバージョンアップしますよね。それに対応してキャッチアップできなくなったら、取り残されると思っていました。
そういった理由から、条件もほぼ変えずに途切れず仕事をするようになりましたね。 タイミングに助けられましたが、オペレーターとしてのスキルもパッケージでの経験も、採用いただいた理由の一つだったのかもしれません。なんとか前向きにトライしてきて、本当によかったと思います。
──これからの働き方に対する展望はありますか?
在宅勤務はできないことが常識とされる社会でしたが、未曾有の事態のなかで在宅勤務せざるを得ない状況となりました。この勤務方法は不可能ではなかったんだと思いました。実際にこうして家で仕事をするうえで、家族にとっても私にもありがたいことばかりです。
今後もこのように柔軟に対応可能な社会になると、さらにみんなが働きやすくなるのではと思います。そして正社員だけでなく、さまざまな雇用形態の社員に対しても働き方の間口が広がることを望みます。 デザイナーの業務というのは可視化できるからこそ、その日の成果をあげるため納得いくまで集中してやりきることが大切です。業務内容的に、デザイナーは在宅勤務と相性がよいのではないでしょうか。時々出社しながら在宅で業務をすることも許されるような、そんな環境で働けたら素晴らしいですよね。
──これからママになるクリエイターの方に一言、メッセージ・アドバイスをお願いします。
まず、ご自分の持っているスキルを諦める必要はまったくないと思っています。そして必要なことは「慣れ」と「割り切り」ではないかと考えています。 最初は仕事と家事・育児の両立はとても大変ですが、いつしか慣れてきます。慣れてくるに従って、自分の時間の落としどころもちゃんと見つかります。
また、そのためには割り切ることも大切。仕事においてもここまでしかできない、と自分を理解して区切りよく割り切ることがメンタル上、重要かなと思います。自分にとってなにが大事なのか、ブレることなく働いていくと両立もかないます。
スキルアップを続けて、向上心を持って進むことも大切ですね。新しい職場で働く機会を得ることで、私は自分自身に足りなかったものが見えてきました。周りの方のよいところに日々刺激を受けながら、現在も働いています。
それから、子どもが生まれたことで行政や周りに頼ることは悪いことではないと実感しました。私のように近くに頼れる親や親族がいないと、朝早くからの出勤や残業も許されません。そんな場合は地域の福祉制度やファミリーサポートを利用するなど、その都度、策を練って乗り切ってきました。上手に頼り、利用することでストレスを溜めずに仕事も育児も楽しめるのではないでしょうか。
これからママになるクリエイターのみなさん、ご自分の可能性を諦めず、ますますのスキルアップを図って貪欲に頑張ってください! 楽しんで!
※2021年9月に取材した内容を掲載しています。
【インタビュアー】しゅふクリ・ママクリ編集部
ママ訪問では、ママクリエイターにリアルな働き方やキャリア観についてインタビューしていきます。
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ママ訪問では、子育てと仕事を両立されているクリエイターの方々のお話を伺いたいと考えています。取材のご協力をいただける方は、お気軽にご連絡ください。
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