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育児をしながら、じっくり探したインハウスデザイナーへの道(後編)【ママ訪問】

「ママ訪問」では、ママクリエイターにリアルな働き方を語っていただきます。今回はインハウスデザイナーとしてご活躍するママクリエイターのAさん(匿名)にお話を伺います。ママになってもご自分のライフスタイルに合った働き方を探すため、Aさんが歩いてきた道のりとは? 前編ではこれまでのキャリアや復帰するまでのお話をお聞きしてきましたが、後編では育児との両立や現在の働き方について語っていただきます。

【この記事は前後編です:前編はこちら】

家庭と仕事の両立は、時間との戦い

──出産後、仕事に復帰して大変だったことはありますか?

やはり育児との両立ですね。フリーのときは子どもがまだ小さくて、寝かしつけに時間がかかったことが一番大変でした。寝かしつけが終わらないとデザインに腰を据えて取りかかれない。落ち着いて仕事ができるのは早くて22時すぎ。深夜0時スタートなんてこともよくありました。ようやく自分がベッドに入っても、夜泣きでまた起きてしまって、寝る時間がなくなることもしょっちゅうです。ひとりブラック企業をしていました(笑)。

派遣社員になってからは、幼稚園に子どもを送ってすぐに電車に乗り、10時から出社をして、幼稚園のお迎え時間である18時までに帰宅。その後、ご飯、お風呂、明日の用意……子どもを寝かせる21時までの3時間がきつかったです。体力的にもヘロヘロでやっていました。通勤に時間がかかったことも大変さに拍車をかけていたと思います。

それから、子どもの気持ちですね。幼稚園に預けるときに泣かれてしまったり、帰宅してからは「きょう、ほんとうはさびしかったんだよ」と心のうちを聞いたりするのがつらかった。 あとは、余談ではあるんですけど、幼稚園の延長保育代が意外に割高で、そこも地味に大変でした。仕事のモチベーションは保育代を稼ぐところにあるわけではないので、なんだかつらかったです。

──なにか工夫していたことはありますか?

子どもが幼児のころは、保育園の一時保育サービスを利用していました。ただ、空きがなければ預かってもらえないので、仕事の都合に合わせて使えることはほとんどありませんでした。そのため、月1回程度、今後子どもが親から離れて過ごす時間の下地をつくる意味で利用していました。

3歳からはプレ幼稚園を利用しました。これは幼稚園に入る前の段階の保育クラスで、週に2回、8時半から14時までのコースがありました。プレ幼稚園に入ると、本入園したとき18時までの延長保育が優先的に利用できるんですよ。預かってもらえる領域や時間をコツコツと増やしていき、自分自身も時間を調整しながら働いていました。

在宅勤務で、働く可能性が広がった

──そして現在の会社にめぐり会われたわけですが、いまのお仕事内容と働き方についてお聞かせください。

現在は主に自社やグループ会社の制作物のデザイン、アートディレクションを担当しています。Web関連も多いですが、パンフレット、チラシなどの印刷物もあります。企画出しの段階からのクリエイティブにも関わっています。

勤務日数は月10日ほどで、就業時間は9時から15時。基本的に在宅勤務で、出社するのは月に2、3日です。派遣社員ではありますが、コロナ感染防止のため、在宅勤務の体制を早々に整えていただきました。会議もオンライン化されるなど、差し支えなく業務をこなしています。

実は在宅勤務が導入されるまでの勤務時間は10時から16時でしたが、通勤時間がなくなり、早めに始業できることになったからです。15時前後に子どもが帰宅するので以前より多めに仕事に集中できるようになりました。それでも10分くらいはかぶったりしますが……。

──在宅勤務はいかがでしょうか?

断然、時間のやりくりがしやすくなりましたね。通勤時間がなくなったのは本当に大きいです。仕事でも家庭でも、常にいかに効率よく作業をこなすか、工程を頭の中でパズルのように組み合わせていましたが、在宅勤務になってからは、その組み合わせの自由度が驚くほど高くなりました。

コロナ感染拡大のタイミングで子どもが小学生になりました。本来なら勤務日は学童保育でお世話になる予定でした。しかしいまはコロナの影響で、夫婦どちらかが在宅勤務であれば利用を控える決まりです。そのため、子どもはだいたい下校時間に帰宅する生活になっています。学童に行かないので、宿題や勉強を見る時間も増えましたが、習い事の送迎がある日にもお仕事を入れることができるようになり、社内の方とのスケジュールも合わせやすくなりました。

また、通勤時間やお客さまの会社への移動時間もなくなり、朝早くの会議にも終業時間近くの会議にも、柔軟に対応できるようになりました。自分にも人に合わせてスケジュールを調整する余地が生まれ、仕事が格段にしやすくなりました。在宅勤務では、いままでかなわなかったかたちの両立もできるんだ!と衝撃を受けているところです。

コロナ禍で、雇用形態を問わず在宅勤務を推進している企業が多いと思います。勤務中でも家族が自宅にいるという状況が、家族の生活に柔軟性をもたらしたのではないでしょうか。そして通勤時間は、思った以上に働き方を制限していたんだと改めて感じます。

働くことをあきらめていた人や、体調の関係で通勤が難しかった人なども、在宅なら仕事ができるかもしれない。働く可能性が広がっているのがいまなんじゃないか、と思います。

──デメリットを感じることはありますか?

思いつく限りでは特にないですね。強いて言えば、勤務時間と子どもの帰宅時刻が若干被ることでしょうか。その間は集中力が保ちにくいです。それと、子どもが少し甘えん坊になったかな。夫婦ともに在宅勤務しているので、いままでよりも甘えん坊を発揮しやすい環境になってしまったかもしれません(笑)。

家庭を大切に、ブレずに、私らしく働く

──約20年にわたりデザイナーとして活動をされていますが、ご出産を経て仕事への向き合い方は変化しましたか?

ずいぶん変わりました。家族との生活を大切にするため、余裕をもって仕事をしていきたいと考えるようになりました。

──具体的にはどのようなことをされているのですか?

お仕事の優先順位をしっかり決めることです。そして早めに状況を周囲にお知らせするようにしています。作業は比較的早い方ですが、どうしても期日に間に合わない、と判断したらすぐお伝えします。気持ちとしてはやり遂げたくても、いまと昔ではどうしても違うので……。悔しいですが、しかたがありません。

そういった相談をしやすい環境づくりや、無理のないようにスケジュールを考慮してくださる周囲の方や会社の気遣いに本当に感謝しています。 家庭でもなるべく助けを求めるようにしています。家事にどうしても手が回らないときなどは、「今日はこれはやりません」と口にしてみて、「いいよ」と言われると気が楽にはなります。

──振り返ってみてターニングポイントとなったのはどこだと思われますか?

やはり、マスメディアンさんに相談して、アドバイスをいただいたところじゃないかと思います。ママクリエイターとして「条件を変えて転職活動をしてみましょう!」と的確な方向を示していただけて。こんな条件でもいいのかな、と不安もあったのですが、実際にぴったりの会社が見つかった。本当に感謝しています。

──これまでのご経験から、これからママになるクリエイターの方にひとことメッセージをお願いします。

私の場合、出産後の身体のダメージが思った以上に大きかったので、まずはゆっくり休養することをおすすめします。 それから子どもの預け先ですが、実はさまざまな方法があります。もし保育園に落ちてしまっても、幼稚園、こども園、幼稚園の延長保育など、模索するとどこかにチャンスはあると思います。

ママになると、仕事の条件にどうしても妥協できないところが出てきます。そこを大切に、ブレずに、時間がかかってもめぐり会いがあると信じて職探しをするとよいと思います。

私はいま、長年の夢であったインハウスデザイナーとしてお仕事をしています。新卒ですぐにインハウスデザイナーになるよりも、たくさんの経験を積んだいまで良かったと実感しています。そしてクリエイティブの仕事は、誰もが今日明日でできるものではありませんので、自信をもって働き続けること。そうすればいつか、子どもも私の仕事に誇りを持ってくれる、そう信じています。

現代の働き方は多様化しています。ご自分に合った働き方が必ずどこかにあるはずです。あきらめず、無理をせず、じっくりと求職して、ママになってもクリエイターとして活躍されることを応援しています。

※2021年5月に取材した内容を掲載しています。


【インタビュアー】しゅふクリ・ママクリ編集部
ママ訪問では、ママクリエイターにリアルな働き方やキャリア観についてインタビューしていきます。

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